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2006年07月30日(日)

仕事冥利に尽きる

「松井さん、私が誰だか分かりますか?」
電話の向こうで、少ししわがれてはいるが力のこもった女性の声がした。語尾に独特な力がこもるその声には聞き覚えがあった。
「Yさんですね」
「そうですよ。6年前にお会いしました。
松井さん、いよいよ約束が果たせそうですよ。あなたに家を建ててもらうという」
夕方、Yさんが知り合いの不動産業者と連れ立って事務所に現れた。
「あれからずーっとこの人に土地をさがしてもらっていたのです。とうとう見つかりましたよ。ここから歩いて行けるところですよ」
「東南の角地で申し分ない立地です」
業者が誇らしげに言葉を継いだ。
 
6年前にYさんは、私の本を読んでやって来られた。
買ってあった土地に娘夫婦のために家を建てて欲しいと。だが、その土地の交通アクセスが娘さんのご主人の勤め先には適していなかったので取り止めになった。
そのときYさんはこんなことを話された。
「松井さん、あなたの本とあなたという人には誠があります。
私は主人の仕事柄から、いろいろな人を見てきました。しだいに人を見る眼が養われ、私の見立てが主人の仕事に役立つようになりました。
松井さん、あなたはこれからどんどんいい人たちに出会います。それはあなたが誠心誠意を込めて本を書いたからです」
 
つくづく仕事冥利に尽きると思った。
握手したYさんの手のひらは、柔らかく、あたたかく、まるで心そのもののような感じがした。

カテゴリー: 投稿者 :松井


 
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