涼温な家 住み心地体感ハウス

松井修三の
思ったこと、感じたこと

数値競争の愚

投稿日:2016年4月29日

(住み心地体感ハウス)

このところご契約が相次いでいる。

今日は、杉並区に建てるMさんからいただいた。

その最中に、電話が鳴った。

手が空いているのは私だけだったので受話器を取った。


30代と思しきお客様は、私が「『いい家』が欲しい。」の著者であることにまず感動してくださった。

そして「せっかくのチャンスなので、思い切ってお尋ねしたい」と前置きして、3つ質問があるとのことだった。

一つは、断熱材の性能について。

「いい家をつくる会を退会したI社のホームページにこんなことが書いてあります。

今読み上げます。

<ソーラーサーキットの親会社『カネカ』が、外断熱工法で重要な『ポリスチレンフォーム断熱材』熱伝導率0.022W/(m・k)というFランクの新製品を発表。経済産業省が誘導する『建材トップランナー制度』の「押し出し法ポリスチレンフォーム断熱材」分野で、2022年度達成基準値0.03232W/(m・k)を大幅に上回る性能です。>


マツミさんはカネカ製品を使っていないようですが・・・」


「はい、そのとおりです。マツミではJSP社の製品をお奨めしています。同社は、カネカより早く、同程度の性能の断熱材を開発しています。商品名「ミラフォームラムダ」といい、今年3月にオープンした「涼温な家」の住み心地体感ハウスで使われています」

「あっ、そうなのですか。これはカネカの独占品ではないのですか?」

お客様の声の調子が急に落ち込むのが分かった。


「次の質問ですが、マツミさんはゼロエネ住宅とあまり熱心に取り組んでいない印象を受けるのですが、頼んだらやってもらえますか?」

「はい、もちろんです。ゼロエネというのは、特段難しいことではなく、5kw程度の太陽光発電を載せさえすれば簡単に達成できます」


「最後の質問です。UA値0.1の違い、つまり北海道並みのレベルと言われている0.45とマツミさんの体感ハウスの0.56とで、住んだときに違いが分かるものなのでしょうか?」

「住み心地の違いですね。これは答えるのが難しいです。一次エネルギー消費量がどの程度減るのか、ゼロエネにどう役立つかは計算で出せます。しかし、快適さの違いについては、同じ環境で、二つの家を住み比べる、つまり2軒の家に同時に住まないことには分からないでしょう。実験棟をいくつか建てて、断熱性能について比較研究している学者さんはいるようです。


断熱性能の向上と住み心地の向上とは、必ずしもイコールとはならないというのが私の持論ですが、的確にお答えできなくてごめんなさい」


私は答えながら、省エネ基準の地域区分5・6地域において、UA値0.1の差を究める必要性を痛感していた。

それは、過剰な性能はかえって住み心地を悪くするという持論の再検証でもあり、これから本格化するであろう数値競争の愚に警鐘を鳴らすためのものでもある。

  • 松井 修三プロフィール
  • 1939年神奈川県厚木市に生まれる。
  • 1961年中央大学法律学科卒。
  • 1972年マツミハウジング株式会社創業。
  • 「住いとは幸せの器である。住む人の幸せを心から願える者でなければ住い造りに携わってはならない」という信条のもとに、木造軸組による注文住宅造りに専念。
  • 2000年1月28日、朝日新聞「天声人語」に外断熱しかやらない工務店主として取り上げられた。
  • 現在マツミハウジング(株)相談役
    「いい家」をつくる会代表
  • 著書新「いい家」が欲しい。
    (創英社/三省堂書店)
    「涼温な家」
    (創英社/三省堂書店)

アーカイブ

2017年
2016年
2015年
2014年
2013年

▲ページの先頭へ