涼温な家 住み心地体感ハウス

松井修三の
思ったこと、感じたこと

二つの不快な印象 その2

投稿日:2015年9月28日

どこの街へ行っても、景観を損なう建築物は必ずと言ってよいほどあるものだ。

マドリッドも例外ではなかった。

昨日紹介したバルセロナ郊外に建つ「ウォールデン7」と同様に、私は写真の建物に奇異な感じを通り越して不快な印象を持った。

ピサの斜塔のように有名になろうと考えてのことなのだろうか、こういう傾く建物は世界中にあるようで、わが国でも名古屋の駅近くにもある。

平衡感覚が突然ショックを受けるのだから、バランスを取り戻したくて再度見てしまう。何回見ても、ショックは収まらない。そのうち腹が立ってくる。建築家の自己満足とエゴに対してである。環境意識の欠如は、モラルに反しているとも言えよう。

こんなデザインを良しとしたクライアント(依頼人)のモラルも問いたくなる。

建築物は、たとえ平屋の高さであっても、公共との折り合いをつけるべきであって、デザインの責任は重大だ。

自己満足やエゴは許されない。ましてや有名になろうなどという動機は。

しかし、この不純でアンモラルな動機が、往々にして建築家に作品をつくり出すエネルギーを与えるのだろう。

クライアントが、「目立つ」ことに最高の価値があると考え、建築家がそうなろうと野心を燃え立たせたときに、建築物は感動的なものにも、醜悪な姿にもなる。

その分かれ道は、建築家の心底に顧客の幸せを願い、見る人にも安心と感動を与えたいという純粋な動機があったか否かだと思える。

マドリッドの傾くビルは、どの角度から眺めても不安ばかり感じた。


以上は、その夜ホテルで書いた感想である。

パソコンの不具合が続いていて、ブログがアップできずじまいでベッドに入った。

翌日、朝食で顔を合わせた久保田さんが開口一番言った。

「あの斜めったビルの建築家が分かりました。フィリップ・ジョンソンですよ」

「えっ、まさか!」

私は絶句した。と同時に、パソコンの不具合に感謝した。

フィリップ・ジョンソンといえば、アメリカモダニズム建築の大御所であり、私が旅行に持参した「ロックフェラー回顧録」(新潮社)にも登場している人だ。

かりそめにも軽々しく語れる人ではない。

私のショックがおさまるのを待って、久保田さんが言った。

「斜度は、ピサの斜塔の約4倍、15度近くもあるそうです。私は、阪神大地震を思い出してしまって怖さを感じました。両側のビルは、道路の下で結ばれ倒壊しない設計になっていて、『ヨーロッパの門』と呼ばれているそうです」。


ヨーロッパには門と呼ばれる建造物は無数にあるが、モダニズム建築の代表とはとても言えないと思いつつ、私はゆで卵の殻を剥いた。

  • 松井 修三プロフィール
  • 1939年神奈川県厚木市に生まれる。
  • 1961年中央大学法律学科卒。
  • 1972年マツミハウジング株式会社創業。
  • 「住いとは幸せの器である。住む人の幸せを心から願える者でなければ住い造りに携わってはならない」という信条のもとに、木造軸組による注文住宅造りに専念。
  • 2000年1月28日、朝日新聞「天声人語」に外断熱しかやらない工務店主として取り上げられた。
  • 現在マツミハウジング(株)相談役
    「いい家」をつくる会代表
  • 著書新「いい家」が欲しい。
    (創英社/三省堂書店)
    「涼温な家」
    (創英社/三省堂書店)

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