涼温な家 住み心地体感ハウス

松井修三の
思ったこと、感じたこと

「説明に溺れる」?

投稿日:2014年11月10日

11月7日付、日経夕刊「プロムナード」に、高橋秀実さん(ノンフィクション作家)が書かれた「説明に溺れる」という題のエッセイがあった。

一部を引用する。

<気のせいかもしれないが、近頃、物事をことさら正確に説明する人が増えている様に思える。

例えば先日、私は接着剤を買いにホームセンターに出かけた。「プラスチック用」と明記されているものを選び、念のため店員に「プラスチックならつきますね」と確認したところ、「本当にプラスチックですか?」と訊かれた。

プラスチックといってもポリエチレンやポリプロピレン、軟質塩化ビニールだったらつかないと。「それでもつくものはありますか?」とたずねると「これですが・・・・・」と別の接着剤を勧めてくれたのだが、「それでもポリスチレンだと溶けてしまうことがあります。それにプラスチックでも、使い方によってはつかないこともありますから」と私に説明した。

何やらつかない可能性ばかりが高いようで、結局私は買うのをやめたのである。

郵便で速達を出す時にも似たような目に遭った。「明日には着きますよね」と念を押すと、「それはわかりません」とのこと。「わからないんですか?」と驚くと、彼はこう答えた。「事故やトラブルがあった場合は着きませんから」

そりゃそうだろうと私は呆れた。大体、私たちは明日生きているかどうかもわからないわけで、それを言い始めたら何も決められないではないか。(中略)

接着剤や郵便の例も、可能性の説明に執心するあまり、肝心の「売りたい」という感情を忘れているのではないだろうか。(後略)」


私は普段から、お客様を体感ハウスなどにご案内するときに、社員に説明のし過ぎはよくないと教えている。なぜなら、お客様が体感をしているときに、説明は時にお客様の気持ちを理論や理屈へ引き戻してしまうからだ。せっかく右脳が働き、感情が「いいなー」と燃え上っているところに、理性という冷水をかけてしまうのはよくない。

住み心地というものは、説明されて納得するものではないのだから。

「空気が気持ちいいなぁ」、「暖かくていいなぁ」、「涼しくていいなぁ」と感じていただくことが大事なので、説明はむしろマイナスになりかねない。

ところが社員は、「『涼温な家』は本当にすばらしいので、つい力んで性能や仕組みの説明に熱が入り過ぎてしまうのです」と言う。

この場合の説明は、高橋さんが書かれているマイナスなものではないのだが、プラスなものであっても説明に溺れないように心すべきである。


と、言っている私が過日デパートで店員さんのちょっとした説明を聞いて、高価なワイングラスを買ってしまった。あの時、説明を受けなかったら私は間違いなく買うことはなかった。

その時の心理について後日書いてみたい。

  • 松井 修三プロフィール
  • 1939年神奈川県厚木市に生まれる。
  • 1961年中央大学法律学科卒。
  • 1972年マツミハウジング株式会社創業。
  • 「住いとは幸せの器である。住む人の幸せを心から願える者でなければ住い造りに携わってはならない」という信条のもとに、木造軸組による注文住宅造りに専念。
  • 2000年1月28日、朝日新聞「天声人語」に外断熱しかやらない工務店主として取り上げられた。
  • 現在マツミハウジング(株)相談役
    「いい家」をつくる会代表
  • 著書新「いい家」が欲しい。
    (創英社/三省堂書店)
    「涼温な家」
    (創英社/三省堂書店)

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