涼温な家 住み心地体感ハウス

松井修三の
思ったこと、感じたこと

堀 文子

投稿日:2014年9月18日

ロンドンへの旅行を23日に控えて、「新『いい家』が欲しい。」の在庫が少なくなってきているので、増刷をしたいと出版社から言ってきたのは先週のことだった。

手直しをしたいところが数か所あるので、その準備に取り掛かっていたところ、今日は久保田さんから「さらに『いい家』を求めて」の在庫が僅少になっているので、大至急増刷に掛かりたいと連絡があった。

うれしい悲鳴を上げながら、手直しが一向に進まない。

いわゆる「筆が進まない」状況に陥ってしまっているのだ。


そのわけは、堀文子画文集「トスカーナの花野」に出合ったことによる。

堀さんは、70歳を過ぎてからイタリアへ行き、単身トスカーナ地方の小さな村に向かう。

この一文を何度読み返し、想像に耽ったことか。


家を見つけて下さったM氏の車でこの家に着いたのは早春の頃だった。走っても走っても続く絵のように美しい田園に見とれ、これから始まる未知の暮らしに胸をわくわくさせていた。

アレッツォを過ぎ、チュチリアーノの村の標識のある角を左に折れ、小川にそって丘を登ると糸杉の並木道に出る。「もうすぐです」というM氏の言葉で突然緊張が始まり、落ち着きを失っていくのがわかる。(中略)


この村には店もなく、M氏はアレッツォの街で寝具、文房具、食料など、必要な買い物をすべて手伝ってくれ、こまごました暮らしのすべてを教えたあと、ローマに帰っていった。いよいよ独りぽっちだ。三月はまだ寒く、石の家では終日暖炉を焚かなければならなかった。燃える薪の炎を見つめていると、いい知れぬ孤独感が身を包んだ。広すぎる部屋をどう使うか。荷物をどこに収めるか。早速しなければならないことが山積みなのにうろうろするだけで何一つまとまらず、時間がいたずらに過ぎていった。(以下略)


「いよいよ独りぽっちだ」

想像を刺激して止まない感慨である。70歳を過ぎた女性が、石積みの家の3階で独りで暮らす生き様は、想像ではとても思い描き切れない。

なんと、心の強い人なのだろう。


そしてこんなことも書かれていた。


日陰に吹き込む乾いた風は皮膚に快く、窓辺に座ってつい風に当たりたくなるが、あたり過ぎると脱水症状を起こし日射病にかかる危険があることを、私も高熱を突然発して知った。風にあたるなと注意されていたことがなるほどと解ったのである。

木も、草も人もその風土の中で生まれ育つ。人々の感性も美感も湿った日本と、この明るく乾いたイタリアとでは違うことをおもい知らされる日々である。


私は、イタリアを旅行した折に、イタリア人は、すきま風を悪魔の風と呼ぶほど嫌いだということを聞いたことがあった。わが国では、「風の抜ける家」がもてはやされているが、イタリアでは、「エアコンの風」と同様に嫌われる風があるようだ。

これまた、想像を刺激される。

  • 松井 修三プロフィール
  • 1939年神奈川県厚木市に生まれる。
  • 1961年中央大学法律学科卒。
  • 1972年マツミハウジング株式会社創業。
  • 「住いとは幸せの器である。住む人の幸せを心から願える者でなければ住い造りに携わってはならない」という信条のもとに、木造軸組による注文住宅造りに専念。
  • 2000年1月28日、朝日新聞「天声人語」に外断熱しかやらない工務店主として取り上げられた。
  • 現在マツミハウジング(株)相談役
    「いい家」をつくる会代表
  • 著書新「いい家」が欲しい。
    (創英社/三省堂書店)
    「涼温な家」
    (創英社/三省堂書店)

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