涼温な家 住み心地体感ハウス

松井修三の
思ったこと、感じたこと

針供養

投稿日:2014年6月1日

一昨夜は、横浜体感ハウスでの打ち合わせが終わって、社長・久保田さんと社員を誘って食事をした。

その席で、ブログの人形の話になった。

社長が、「壊れたお人形を供養してあげるという発想は、さすが久保田さんですね」と感心した。

「社長の家にも三人娘ですから、人形はたくさんあるでしょ?」

みんなダンボールにしまって、小屋裏に保存してあります」

本好きな社員が言った。

「私はまだ独身ですから、お人形の心配はありませんが、本を処分するとき、いつも心に残る未練のようなものをすっぱり断てればと思う時があります。本の供養というものもあるのでしょうか?」

すかさず社長がスマホで検索し、こんな書き込みを読んで聞かせた。


本年は新しい試みとして、下記の通り「本供養」を開催致したく、ご案内申し上げます。


「本供養」の主旨は、ご家庭などでご家族や故人が愛読されていた、単に捨ててしまうには忍びない本や雑誌、教科書等の様々な書籍をお持ち寄り頂き、長年のその役割に感謝すると共に、お祓いをして供養して頂いた後、書籍のプロたる古書店の眼で選別をさせて頂き、役割を終えたものについてはリサイクルへ、まだまだ利用の出来る本や後世に伝えていくべきものについては、当組合運営の交換会にて入札やセリを行い、その本を必要とされている方々の元へとお届けして社会に還元して参ると共に、それにより得られた収益は、ユネスコ(http://www.unesco.or.jp/)に寄託し、世界中の恵まれない子供達の教育・識字運動の一助にして頂ければと考えております。


「すばらしい企画ですね」

「そうは言っても処分は簡単だけど、寄付するには梱包したり、発送したりとかなりの手間暇が必要だよ」

「世の中、人のためです。そのくらいの労は惜しまずやってください」

「わかりました」

社員は、素直に返事をした。


体感ハウスには書棚があって、そこには久保田さんの書庫から拝借した「幸田文しつけ帳」(平凡社)がある。その中に「針供養」という一文があるのを思い出して読み直してみた。

以下は一部を抜粋する。

「供養を受ける針は、その一年じゅうに折れたり曲がったりして、使えなくなったものである。普通家庭でつかう針にも、和服針とメリケン針とがある。どちらにしろ小さいからだである。針ほどの、という形容詞があるくらいで、およそ道具の中でいちばんささやかなものだけれど、このあと始末は誰にしても、ちょっといい加減にはできないとおもう。あやまって刺されては面倒なことになる。一年じゅうのあがり針をまとめておいて、そうした供養をするのもうなずける気がする。」


確か小学1年生の頃だった。「針供養」に行くという母に連れられて近くの神社へ行った。小雪の舞う寒い日だった。

「なんで、折れたり曲がったりした針を拝むの?」

そのときの母の言葉だった。

「おまえが着ている服もズボンも、この針さんたちのおかげで作れたんだよ。ありがとうございましたと拝みなさい」

私は、隣で手を合わせる母をそっと見上げた。

その真剣な姿が今もまぶたに浮かぶ。

  • 松井 修三プロフィール
  • 1939年神奈川県厚木市に生まれる。
  • 1961年中央大学法律学科卒。
  • 1972年マツミハウジング株式会社創業。
  • 「住いとは幸せの器である。住む人の幸せを心から願える者でなければ住い造りに携わってはならない」という信条のもとに、木造軸組による注文住宅造りに専念。
  • 2000年1月28日、朝日新聞「天声人語」に外断熱しかやらない工務店主として取り上げられた。
  • 現在マツミハウジング(株)相談役
    「いい家」をつくる会代表
  • 著書新「いい家」が欲しい。
    (創英社/三省堂書店)
    「涼温な家」
    (創英社/三省堂書店)

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