
松井修三の
思ったこと、感じたこと
大地で寝られる人
投稿日:2014年5月4日
私は、曽野綾子の本を読むたびに恐怖を感じるのだ。そもそも、この方をどのような呼び方をしたらよいのか迷う。「さん」では失礼と思うし、「様」ではしっくりこないし、「先生」では半端な感じで、「尊師」に近い想いがあるのだが、ここでは曽野綾子と書かせてもらう。
恐怖を感じる理由は、「人間の基本」(新潮新書)に書かれていた。
「空襲の夜は、火に追われて何キロも歩いたことがあったので、穏やかな気分で横になれる大地さえあればありがたかった。もし板の上や床の上なら天国だと思っていましたが、今では大半の人がちゃんとした寝床以外の地面の上なんかには寝られないと言います。八十歳の老人が、いざとなれば何とでもなる、そう思えることが若い人たちにとっては恐怖でしかないようです」。
そう、私は「大地で寝られる」、すなわちどこでも寝られる人が恐いのである。あえて非日常的な環境の中に身を置くような訓練をしたこともないし、寒さ、暑さ、湿気、においに過敏であるだけでなく、気流神経症ときては大地で寝られる訳がない。軟弱者の極みと言われたくはないが、「涼温な家」で寝られる幸運を素直に喜びたい。
併読している「風通しのいい生き方」(新潮新書)の第一話は「マダカスカルの気質」から始まる。地球儀で想像の旅をしようとしたのだが、私にはまったく不可能だった。マラリア蚊の羽音を想像しただけでも眠られなくなった。
どこでも寝られる女性をもう一人知っている。川口マーン恵美さんである。小さな漁船に乗って尖閣諸島へ向かう途中、荒波に揺られながら寝る話を読んで以来、やはり恐怖を感じるようになったのだ。
この連休中、書斎では曽野本を、体感ハウスでは川口さんの「ドイツは苦悩する」)、「あるドイツ女性の二十世紀」(いずれも草思社)を読んでいる。
読書の環境として、これ以上のところは考え付かない。なにせ空気が気持ちいい。

- 松井 修三プロフィール
- 1939年神奈川県厚木市に生まれる。
- 1961年中央大学法律学科卒。
- 1972年マツミハウジング株式会社創業。
- 「住いとは幸せの器である。住む人の幸せを心から願える者でなければ住い造りに携わってはならない」という信条のもとに、木造軸組による注文住宅造りに専念。
- 2000年1月28日、朝日新聞「天声人語」に外断熱しかやらない工務店主として取り上げられた。
- 現在マツミハウジング(株)相談役
「いい家」をつくる会代表 - 著書新「いい家」が欲しい。
(創英社/三省堂書店)
「涼温な家」
(創英社/三省堂書店)
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