涼温な家 住み心地体感ハウス

松井修三の
思ったこと、感じたこと

「収納は悪」?

投稿日:2014年5月23日

午後から現場回りをした。

H邸の二階から久保田さんのソプラノが降ってきた。

「来てみてください!」

あわてて二階に駆け上がった。

「どうしました?」

「この部屋には、収納がないのですか?」

10帖の洋室は、Hさんのお母さんの部屋となる予定だ。

棟梁の西村さんも私の後からやって来ていた。

「そうなんですよ。私も心配で図面をもらったときにも、造っている最中にも確認しました。でも必要ないというのです。今からでも造れますがね・・・」

私の意向を探るように棟梁が言った。

実は、プランニングの最中に設計士から相談されていて、私は「収納はあったほうがいいのでは」とアドバイスしていた。


棟梁の説明を聞いた久保田さんが言った。

「それについて、先日、娘さんと来られた70代のお母さんが、『収納は悪』と言われたのです。理由を伺うと、収納があればあっただけ物をためこんでしまうからだと。だから、今度家を建てるときはやたらに収納を増やさない予定だそうです」

「まあ、当然何がしかの家具を置かれるのだろうけれど、達観することがおありなのだろうね」

「『断・捨・離』がブームになるほど、物を増やすことは簡単ですが、減らすことは難しいですね。Hさんのお母さんのように、収納を設けず必要なもの最小限で暮らすことができたら本当にすばらしいことだと思います」

「なるほど、根本を絶つ、つまり『収納は悪』という考えに立てば、『断・捨・離』などという余計なエネルギーが必要なくなるね」

「そう言われてみると、私の母親は毎日のように、『断・捨・離』に悩んでいますよ」

三人は笑い合った。


Hさんのお母さんは、いつも笑顔を絶やさず、お会いするとほっと心を和ませてくださる。

上棟の日は、風が吹いて記録的な寒さが身にしみた。あの時、お母さんは言われた。

「みなさんが、命懸けで上棟してくださったそのお心のあたたかさで、私は寒さを何も感じません」と。

お母さんは、人生の達観者なのかもしれない。

住まわれた後に、三人で感想をお尋ねに来ようと話し合った。

  • 松井 修三プロフィール
  • 1939年神奈川県厚木市に生まれる。
  • 1961年中央大学法律学科卒。
  • 1972年マツミハウジング株式会社創業。
  • 「住いとは幸せの器である。住む人の幸せを心から願える者でなければ住い造りに携わってはならない」という信条のもとに、木造軸組による注文住宅造りに専念。
  • 2000年1月28日、朝日新聞「天声人語」に外断熱しかやらない工務店主として取り上げられた。
  • 現在マツミハウジング(株)相談役
    「いい家」をつくる会代表
  • 著書新「いい家」が欲しい。
    (創英社/三省堂書店)
    「涼温な家」
    (創英社/三省堂書店)

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