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住み心地のいい家 「涼温な家」を建てています。 「涼温な家」マツミハウジング

涼温な家 住み心地体感ハウス

松井修三の
思ったこと、感じたこと

大阪/美和工務店さんの勉強会

投稿日:2013年5月13日

大阪/美和工務店さんの勉強会に昨日招かれた。

久保田紀子さんが、冬の寒い日の朝、北側の窓が開く家が多い、その理由は結露対策であると話すのを聞きながら、創業して間もない頃のある情景を思い浮かべた。


新築祝いの席で、女性の施主さんは大変喜ばれ、大勢のお客様の前で感謝の言葉を述べられた。

ところが翌日の朝、施主さんから悲鳴に近い電話が入ってきたのだ。

「松井さん、二階の北側の押し入れの中で水漏れが起きています!」

私は、何のことやらすぐには呑み込めなかった。

「そこには水道の配管はないはずですが???」

こんな間抜けな返答をして飛んで行った。

二階に上がると、和室の8畳間に濡れた布団が積まれていた。

押し入れの中を見た瞬間、私は絶句した。

壁がバケツで水を引っ掛けたかのようにびしょ濡れになっていたのだ。

「なんだ、これは!」


前夜遅くまで30人近い人たちが祝宴をしていた。

当時の家では、窓で結露するのは当たり前と見做されていたが、押し入れの中でかくも激しい結露が生ずるとは、私の経験になかった。

昨夜、あれほどまでに感謝し褒めてくださった施主さんがすっかりしょげかえってしまわれた。その困惑された表情はいまも忘れることができない。

私は、ようやく言葉を探り当てた。

「原因を必ず突き止めて、改善します」と。


お燗のために石油ストーブの上にのせられたヤカンをはじめ、調理、人体などから出る大量の水蒸気が二階に駆け上り、冷えている北側の押し入れの壁面で結露した。

この現象は理解できた。しかし、断熱材を丁寧に施工したにもかかわらず、なぜ、結露が生じたのかが謎だった。

断熱材のメーカーはもちろん、先輩工務店の意見を聞き、学者さんにも教えを乞うた。

すると壁の中の通気性を確保することが大事だということになったのだが、通気層を断熱材の室内側に設けるか、外側に設けるかで意見が分かれた。両者とも確信が持てないのだ。そこに、ある業者が波型に成形した金網を開発し、これを手前に入れるなら結露は生じなくなると断言した。そこで早速施主さんの了解を得て試すことにした。


工事は私と大工さんの二人で行ったのだが、金網の鋭い切口が手に突き刺さり、血が噴き出る。軍手が真っ赤になり床の養生シートに滴るほどだった。

ようやく工事が一段落したところに電気屋が来て言った。

「これはダメだ。金網が電線に突き刺さったらショートして火事になってしまうぞ!」

当時は、創業して間もない30代半ばの工務店主よりも、40代、50代の職人の方が貫録があり、言葉に重みがあった。

私は内心当惑しあせったが、すぐに解決策を提案した。

「なるほど、それなら安心だな」と電気屋は納得した。


その後、押入れの結露は発生していない。しかし、当時は知らなかったことだが建築物理的に考えれば、通気層が内・外どちらに設けようともそれだけでは解決にならないのである。50ミリ厚のグラスウール断熱材の断熱性能不足と、余分な水蒸気を排出するための換気不足を改善し、結露が生じる温度差の解消を図らないことには、生活の仕方によっては再発するはずだ。


事件から17年後、1992年になってマツミハウジングは外断熱工法に取り組み、第三種換気を採用することでようやく結露問題と決別することができた。

この頃のダイワハウスのテレビコマーシャルを思い出す。

結露でびしょ濡れの窓ガラス越しに、帰宅するお父さんの歩いてくる姿がぼんやりと映る。 娘さんが人差し指で「おかえりなさい」とガラスに書く。

なんとも暖かみがあって幸せそうな家庭の光景だ。売上高2兆円突破を誇るダイワハウスでも、今から20年ほど前には、なんと結露を美化し、肯定する家を大量に生産販売していたのである。

いや、ダイワハウスだけでなく積水ハウスもみな同じだった。唯一、エスバイエルだけが金網の代わりに卵のケースにそっくりなものを用いて、構造内部の結露対策としていた。


久保田さんの話は、ハウスメーカーが盛んにPRしている「風の抜ける家」に及んだ。風には、PM2.5、花粉、土埃、カビ、細菌、湿気などが含まれているのは常識であるが、メーカーはまったく無頓着だ。

結露さえ売り上げに役立ててしまうのだから、目に見えない大気汚染なぞは風が吹き飛ばしてくれると考えても何ら不思議ではなかろう。

その家に太陽光発電・蓄電池・HEMSを備えたものを「スマートハウス」といい、これに優る省エネ住宅はないと断言する。

聞いているうちに、次第に腹の中が煮え立ってきた。私の出番の時までに冷まそうと努力したのだが、お客様方の真剣なまなざしを浴びたとたんに、ハウスメーカーへの憤りが抑えがたいものとなった。

結露のために、冬の寒い日に窓を開けなければ暮らせず、熱籠りして風抜けに頼らなければ不快になる。そんな家を「環境配慮型住宅」・「スマートハウス」として売るのはまやかしではないか!


久保田さんの話に深く頷かれていたお客様たちにとって、私の憤りは消化不良になったかもしれない。

終わって、美和工務店の近藤常務さんが言われた。

「同じ女性の立場から聞いていると、久保田さんの話はとても分かりやすくて良かったですよ。とくに今日は素晴らしかった」と。

社長さんは満面の笑みで、「美和さんに頼むことにしました」と力強く言われて帰られたお客様が二組もいたと報告されほっとした。

  • 松井 修三プロフィール
  • 1939年神奈川県厚木市に生まれる。
  • 1961年中央大学法律学科卒。
  • 1972年マツミハウジング株式会社創業。
  • 「住いとは幸せの器である。住む人の幸せを心から願える者でなければ住い造りに携わってはならない」という信条のもとに、木造軸組による注文住宅造りに専念。
  • 2000年1月28日、朝日新聞「天声人語」に外断熱しかやらない工務店主として取り上げられた。
  • 現在マツミハウジング(株)相談役
    「いい家」をつくる会代表
  • 著書新「いい家」が欲しい。
    (創英社/三省堂書店)
    「涼温な家」
    (創英社/三省堂書店)

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