涼温な家 住み心地体感ハウス

松井修三の
思ったこと、感じたこと

「生活不活発病」と「HEAT20」のシナリオ

投稿日:2016年7月5日

熊本地震で大変な被害を被った益城町で避難所生活を送っている65歳以上の人たちが、「生活不活発病」に陥ってしまうケースが増えているとの朝日新聞の報道に接して心が痛んだ。


「生活不活発病」とは、環境の変化で日常生活が活発でなくなり、全身の機能が低下すること。足腰の筋力の衰えが目立ち、うつ病になりやすいとされる。

高齢者にとって、筋力の喪失は健康寿命を失うに等しい。


言い換えれば健康寿命とは、自立のための足腰の筋力が維持されている状態ともいえよう。だから、家はそのために役立つことが大事なのである。


昨日、HEAT20(家づくりの専門家が集まって、これからの断熱性能の推奨水準を設定し、省エネとともに住む人の健康維持・増進を図る委員会)の「外皮性能グレードと住宅シナリオ」について勉強会を開いた。

そのシナリオによると、暖房は、在宅時だけ、人がいる部屋だけ暖房となっている。主にリビングだ。

トイレ・廊下・浴室・洗面室・和室は暖房なし。これでは、家の中に5度ぐらいの温度差が生じてしまう。断熱強化を図っても、寒い場所が生ずることになる。

省エネにはなるが、健康寿命を延ばすには役立たない。なぜなら、3度以上の温度差のあるところは不快に感じるから足が遠のいてしまう。5度もあったら、ヒートショックを受けかねない。

快適なリビングから動きたくなくなってしまうはずだ。それでは、高齢者の行動範囲が狭くなるから「生活不活発病」に陥りやすくなる。


こんなシナリオの家は造ってはならない。換気と暖房の方法が間違っているのだ。

冷房についても、局所・間欠、つまり人がいる時、その部屋だけでエアコンを利用するから、不快な温度差があちこちに生じてしまう。


「涼温な家」では、横にも縦にも、温度差がほとんど生じない。どの部屋、どの場所に行っても不快な温度差がない。だから、高齢者は行動の意欲を刺激され、行動の範囲が広がる。

快適感が脳を刺激し、動くことでさらに脳が刺激され、生活が活発化する。


「HEAT20」が推奨する在宅時「部屋だけ快適」は、健康寿命を縮めかねない。これからの家づくりが目指すべきは、「家中快適」にして、高齢者が頭や体を動かす機会を増やし、「生活不活発病」を遠ざけることだ。


断熱強化を図っても、換気と冷暖房の方法を見直さないかぎり、健康に役立つ住み心地は得られないことを知るべきだ。

  • 松井 修三プロフィール
  • 1939年神奈川県厚木市に生まれる。
  • 1961年中央大学法律学科卒。
  • 1972年マツミハウジング株式会社創業。
  • 「住いとは幸せの器である。住む人の幸せを心から願える者でなければ住い造りに携わってはならない」という信条のもとに、木造軸組による注文住宅造りに専念。
  • 2000年1月28日、朝日新聞「天声人語」に外断熱しかやらない工務店主として取り上げられた。
  • 現在マツミハウジング(株)相談役
    「いい家」をつくる会代表
  • 著書新「いい家」が欲しい。
    (創英社/三省堂書店)
    「涼温な家」
    (創英社/三省堂書店)

アーカイブ

2017年
2016年
2015年
2014年
2013年

▲ページの先頭へ