
松井修三の
思ったこと、感じたこと
見習い
投稿日:2013年6月11日
4月1日のブログ「大工志望の新入社員」で紹介した深澤 樹は、会社での初期研修を終え6月1日より大工見習いとしての現場研修が始まった。まずは6日に厚木市で上棟したO邸が記念すべき第1棟目となった。
棟梁は60歳になる高橋浩二さん。高橋さんはすでに何人もの見習いを一人前の大工に育て上げてきている。現在も社員大工である林賢司さんを育成中だ。昨年の忘年会の席で親方は言っていた。
「修行は、つらいものだ。なんべん田舎の母親を思い浮かべては布団の中で泣いたものか」と。だが深澤さんは、疲れも見せず元気に楽しそうに働いていた。
3年前にマツミハウジングに現場監督として入社した松本有加里は、同級生からこんな話を聞いたという。
「自分はいま、現場監督として20現場ほどを持たされている。毎日、現場を駆けずり回るだけ。お客様の顔も見えず、何を喜びとしていいのか分からない。しだいにやりがいをなくしつつある」と。
昨年、マツミに入社した大工志望の円成翼と榎本恭介は、安部棟梁の下で修行中である。世田谷のH・K邸で働いているが、現場を見に行く度に、顔付きや態度が頼もしくなっていく。
阿部棟梁は、「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、褒めてやらねば人は動かじ」という、山本五十六の言葉をモットーにして指導をしているようだ。
「親方はどう、厳しいか?」と二人に尋ねると、
「はい、年がら年中しかられています。でも1日も早く親方のようになりたいです」と目を輝かせて答える。
入ったころはぼうっと直立不動で「大丈夫かな?」とあやぶまれもしたが、今は二人共に前傾姿勢で、まるでスポーツ選手のようだ。つま先に重心がかかり、親方の一声、目の動きひとつすら見逃すまいと真剣そのものだ。なによりもありがたいのは、そんな新米たちをお客様があたたかく見守り応援してくださることだ。
以前、ブログで紹介したが「職人報われぬ社会に未来はない」という朝日新聞の声覧を思い出す。大工の原田利徳という方が、次のように書いておられた。
「額に汗をかきながら働く職人が報われなくては、日本の未来はないと思う。(略)
大手住宅会社の社員は、会社の利益のために職人の手間賃を安く買いたたく。
職人はどんなに買いたたかれてもほかに仕事がないので請け負う以外にない」。
先の松本有加里の同級生も同じなのだと思う。買いたたいた側は、創業以来最高の利益を上げ、その一方で大工や職人の心は荒んでいく。
見習い大工や職人たちの心が燃え、生き生きと喜んで働きたくなる家造りを私は大事にしたい。

- 松井 修三プロフィール
- 1939年神奈川県厚木市に生まれる。
- 1961年中央大学法律学科卒。
- 1972年マツミハウジング株式会社創業。
- 「住いとは幸せの器である。住む人の幸せを心から願える者でなければ住い造りに携わってはならない」という信条のもとに、木造軸組による注文住宅造りに専念。
- 2000年1月28日、朝日新聞「天声人語」に外断熱しかやらない工務店主として取り上げられた。
- 現在マツミハウジング(株)相談役
「いい家」をつくる会代表 - 著書新「いい家」が欲しい。
(創英社/三省堂書店)
「涼温な家」
(創英社/三省堂書店)
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