涼温な家 住み心地体感ハウス

松井修三の
思ったこと、感じたこと

「マイホーム価値革命」

投稿日:2017年8月30日

過日、勉強会が終わってからの個別相談に私を指名された方がいた。

60代後半と思われるご主人に促されて、奥さんがバッグの中から取り出した本が、牧野知弘著「マイホーム価値革命」(NHK出版新書)だった。

副題に「2022年、不動産の常識が変わる」とあり、帯には「日本の3分の1が空き家の時代が始まる  売るから貸すへ」とあった。

赤線が引かれたところが目に入った。


<「家」は基本的に「住む」ためのものです。「住む」とはどういう行為でしょうか。それは一日一日の生活をするために、住居という空間を消費していくということです。「衣食住」という言葉があります。「衣」と「食」についてはほとんどの人が消費だと理解しています。ところが「住」になった瞬間、不思議と人々はこれを消費とは考えず、「資産」としての価値を追い求めるようになるのです。(中略)

2022年、広大な面積の生産緑地が宅地となり、団塊世代の「持ち家」が賃貸物件として大量に供給される時代が始まります。それを境にマイホームを持つことの意味は一変し、私たちが家に抱いていた価値観は様変わりするでしょう。

「マイホーム価値革命」の幕開けです。マイホームを所有するなら、不動産の投資としてシビアに判断しなければなりません。快適に暮らす住まいとしての効用を求めたいのなら、「投資」の甘い考えは捨てるべきです。>


ご主人が言われた。

<ここ数年、終の棲家を建てようと住宅展示場を回り、いろいろ勉強してきました。ゼロエネで地震に強い家がよいとSハウスにほぼ決めかけていた時に、この本を読んで家を建てる気がすっかり失せてしまったのです。


「『いい家』が欲しい。」は、10年以上前に読んでいたのですが、当時はまだ家を建てるというはっきりした考えが定まっていなかったので流し読みしたのでしょう。

昨年、本屋さんでも見かけたのですが、もう10年以上前の本だし、ゼロエネにも耐震にも触れていない一時代前の本だと決めつけていました。


ところがある日、久保田紀子さんの「さらに『いい家』を求めて」を読んで感動したという女房から、久保田さんに、こういう家を建てると決断させた「『いい家』が欲しい。」という本をもう一度読んでみてと強く薦められました。

まだ読み始めたばかりですが、とにかく勉強会に参加してみようとお邪魔したわけです。


松井さんは、家を資産としてではなく住み心地で評価すべきであり、評価が高い家は住む楽しみにあふれ、健康寿命を延ばすのに役立つ。

家づくりは、健康寿命を延ばすための投資なのだと明言されました。

それを聞いた瞬間、私たち夫婦は雷に打たれたような衝撃を受けました。家に何を求めるべきかが明確になったのです。

牧野さんの本を読んでから続いていた鬱状態が吹っ飛びました。

もう迷わず「涼温な家」を建てます。是非お力を貸してください。>


13年前、83歳と80歳のご夫婦の家を建てたことがあった。

奥さんの心臓は、ペースメーカーの力を借りていた。

私の顔を見て、不安な様相を感じたのだろう。ご主人が言われた。

「私たちには息子が一人います。彼は出張していて別居していますが息子のために建てるのではありません。

松井さんの本を読んで、たとえ1年でもいい、こういう家に住めたら私たちの人生は最高のものになると二人の考えが一致したからです。

そのために数千万円のお金を掛けて、住むのはたった数年、場合によっては数か月となればあまりにも馬鹿げていると言われるかもしれません。

でも、私たちは今のこの家で人生を終わりにしたくないのです」

傍らで白髪の奥様が力強く微笑まれていた。私は、あの日の感動を鮮明に思い浮かべながら話した。


<本に書きましたが、家にはいくつもの価値があります。

資産価値・デザイン価値・設備価値・省エネルギー価値・環境コストで評価する「環境価値」。一番大切なのは住み心地、すなわち「居住価値」です。

「居住価値」以外のものはどれも年々価値が減少するどころか、完成した瞬間から大きく評価が下がってしまうものもあります。

牧野さんが言われるように「消費」されてしまうのです。


ところが「住み心地」という価値は、消費されるということはまったくなく年々増していきます。目には見えないけれど、住んでいる人にとっては、かけがえのない価値として実感できるものなのです。

「涼温な家」を建てられる方は、みなさんがその価値を求められます。


家は、まさに「幸せの器」です。

住んでいる人が住み心地に満足していて、健康でいられるとしたらその家の価値は最高のものと言えるでしょう。

これから家を建てる人は、住み心地こそが一番大切な価値なのだとしっかり理解することです。


そうすれば、生産緑地が一斉に宅地化され土地の値段が暴落しようと、マンションの価格が大暴落しようと、空き家が1000万戸増えようと、住み心地という価値は何の影響も受けないものであることが分かります。


前に紹介した80歳代のご夫婦の息子さんは、ご両親亡き後、家を売却することも賃貸することなく、現在お一人で住んでいます。私とは特別会話を交わしませんが、きっとご両親が大切にされた価値観に共感されていることでしょう。>


それにしても、牧野さんという人は「住む楽しみ」をご存じないようだ。

氏のイメージにあるのは、郊外型分譲住宅か建売か、ハウスメーカーの量産住宅なのであろう。

それらに「住む」という行為は、一日一日の生活をするために、住居という空間を消費していくということにほかならないのかもしれない。


  • 松井 修三プロフィール
  • 1939年神奈川県厚木市に生まれる。
  • 1961年中央大学法律学科卒。
  • 1972年マツミハウジング株式会社創業。
  • 「住いとは幸せの器である。住む人の幸せを心から願える者でなければ住い造りに携わってはならない」という信条のもとに、木造軸組による注文住宅造りに専念。
  • 2000年1月28日、朝日新聞「天声人語」に外断熱しかやらない工務店主として取り上げられた。
  • 現在マツミハウジング(株)相談役
    「いい家」をつくる会代表
  • 著書新「いい家」が欲しい。
    (創英社/三省堂書店)
    「涼温な家」
    (創英社/三省堂書店)

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