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松井修三の
思ったこと、感じたこと

「鈍感な世界に生きる敏感な人たち」

投稿日:2018年2月10日

この題名の本を書いたのは、デンマークのイルセ・サン(デイスカヴァー・トウェンティワン2016年10月15日発行)。

著者は、「世の中の5人に1人がHSP(High Sensitive Person:とても敏感な人)だといわれています。HSPは、決して病気ではありません。HSPという概念は、アメリカの精神分析医で学者のエレイン・アーロンによって、1996年に提唱されたもので、人を男性と女性というように性別で二つに分けるように、とても敏感なタイプと、タフなタイプの二つに分けただけのことです」という。


17年前のことを思い出した。

私は、2001年1月23日、朝日新聞の「天声人語」に「外断熱しかやらない工務店主」として取り上げられた。それを読んで、3時間後に母を伴って私の前に現れた人が、後に「さらに『いい家』を求めて」を書いた久保田紀子さんだった。


そのとき、交わされた会話が第一部の「家にいじめられる人」に書かれている。

<快適で満足できる住み心地を得るためには、さらに換気と冷暖房の設計と実施が必要です。そして、それがいいかどうかは、データや理論ではなく住む人の感受性、つまり理屈ではなくて肌に合うか否かで判断されるのです。久保田さんは、感受性が優れているようですね。寒さ、暑さ、臭いに敏感でしょ?」

「ええ、暑さはかなり我慢できるのですが、寒さは苦手です」

「小さいときから、感受性の強い子でしたよ」

母は、そうであったがために子育てに苦労したと言いたかったようだ。松井さんはすぐに察したかのように、

「私は、男の子を四人育てたのですが、長男がそうでした。いや、私自身がそうだったのです。母は、よく言っていましたよ。気難しくて、扱いにくい子だったと。一日も早く嫁さんに渡したかったと、結婚したすぐ後で女房に言ったそうです。今の時代でしたら、母親がそんなことを告白したら、嫁さんに逃げ出されるところですね」

母は、大声で笑い出した。笑いがおさまると、松井さんはしんみりと言った。

「敏感な人ほど、家にいじめられるのです」と。

「体の弱い人は、敏感です。これまでの家造りは、その人たちに対して鈍感すぎていました。温度にも、湿度にも、空気や音・においに対しても。住宅展示場も、住宅雑誌も、設計士も、建築家と称する人たちも鈍感で無知であり過ぎます」>


この私の考えは、今も変わらない。なぜなら、ほとんどの造り手たちは、「感受性のような主観的な価値にこだわったら、商売にならない」と確信した家づくりを続けているからだ。

鈍感な造り手たちが、自分たちの都合がいいように建てた家で、敏感な人たちは我慢し諦めて、ストレスに耐えるのだ。この構図は、「ゼロ・エネ」「AI」「IoT」の時代、ますますはっきりしてきている。


イルセさんは書いている。

「HSPは環境が整っていない状況下では困難に見舞われますが、一方で、適切な環境下では、HSPでない人たちよりも、その環境を楽しめるということが研究で裏付けられています」


「環境」を「住み心地」に置き換えると合点がいく。

「さらに『いい家』を求めて」という本は、多感な造り手と、「とても敏感」な住まい手とが出会って、住み心地の質の向上に努力し続けた物語である。


4月に「改定6版」が発売となる。

住み心地が良い家、主婦が喜び、輝く家を手に入れるには、理論や数値よりも感性が大事だと著者は熱く語っている。これから家を建てる人たちだけでなく、家造りに携わる人たちにぜひ読んでいただきたい。


  • 松井 修三プロフィール
  • 1939年神奈川県厚木市に生まれる。
  • 1961年中央大学法律学科卒。
  • 1972年マツミハウジング株式会社創業。
  • 「住いとは幸せの器である。住む人の幸せを心から願える者でなければ住い造りに携わってはならない」という信条のもとに、木造軸組による注文住宅造りに専念。
  • 2000年1月28日、朝日新聞「天声人語」に外断熱しかやらない工務店主として取り上げられた。
  • 現在マツミハウジング(株)相談役
    「いい家」をつくる会代表
  • 著書新「いい家」が欲しい。
    (創英社/三省堂書店)
    「涼温な家」
    (創英社/三省堂書店)

世界に誇れる、住み心地いちばんの家を目指して 海外視察旅行記

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