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2007年09月17日(月)
オランダ住宅視察−2


昨日は、世界遺産を二つ見に出かけた。
一つは、ユトレヒトにあるシュレーダー邸で、リートフェルトの作品だ。
もう一つは、キンデルダイクの風車小屋群である。
シュレーダー邸についての感想は後日書くことにして、まずは風車小屋を見て思ったこと、感じたことを書いてみたい。

私たちは、そこでコックという人に出会うことになり、彼から直接風車小屋にまつわる数々の話を聞くことができた。
彼は、NHKテレビの世界遺産シリーズで取り上げられているという。
風車は木造レンガ積みで、構造材はフランスから運んできた樫の木だそうだ。回転軸には、高さが10メートルぐらいで二抱えもある巨木が用いられていている。
風車小屋はどこから眺めて絵になって、のどかな田園風景の象徴のように見える。
しかし、かってはそこで家族が暮らしながら風車の維持管理をしていた。
冬になると川は凍って、吹きすさぶ冷風は容赦なく小屋を攻め立てたことだろう。
調理台はストーブのように薪を燃して熱源とする。その余熱で夜中の温度を維持することはとても不可能だ。薪をくべ過ぎて寝入ってしまい、火事になった小屋もあるとのこと。
トイレは外にある。真冬の夜中、用足しに出るには相当な覚悟が必要だ。そこで、ベッドの奥には尿瓶の置き場がある。
私は、コックさんに見習ってベッドに寝かせてもらった。子供用の二段ベッドの上段のようで、体を真っ直ぐにすることも、夫婦が互いに寝返りを打つことも難しいほどの狭さだ。足元の棚の上は、赤ちゃんのベッドになっていて、その下の奥まった所に尿瓶置き場があった。しばらく目をつむって、小屋守りの暮らしを想像した。
司馬遼太郎の「オランダ紀行」の一節を思い出しながら。
この国のひとびとは、堤防をつくって内側の土地を干拓し、干拓地に運河を掘って地面を乾かし、さらに運河の水を排水するポンプの動力として風車を利用してきた。この国を歩いているかぎり、私どもが見、ふれている地面はことごとく過去のオランダ人がつくったものである。

オランダは海抜がプラスの数字になるところはほんのわずかな面積しかなく、ほとんどはマイナスである。低いところでは海面より4.5メートルも下がっているそうだ。
だから、オランダの人々にとって19世紀までは、風車群は必死の産物であり、命を賭けた風景であったと思われる。
「ここにある家具だがね」
と、コックさんは隅に置いてあったテーブルを引き出した。
「家具の材料を虫が食っていることがあるんだよ。ほら、表面に小さな穴がたくさんある。この虫が、構造材に移り住んでしまうと厄介なことになるんだ。
ほら、あそこの梁の隅を見てごらん。あんなにやられてしまっている」
維持管理で一番厄介な問題は、木を侵食する虫であるとは考えさせられることだった。
マツミノ家でも同じようなことが数件起きているからだ。
東南アジアで作られた家具は特に注意が必要だ。
コックさんは、小屋の構造をホゾ、仕口で組んでいることを盛んに自慢した。
「あなたは、どのように作っているか?」と質問する。
日本の家も同じように作られていると答えると、すかさず質問してきた。
「木は、何を使っているか?」と。
コックさんにはヒノキがどのような材なのか理解できない。
彼は、ついてこいと外に出た。
「この小屋は、私の宝物でいっぱいだ」と説明しながら、数本の木材を取り出して言う。
「このような堅い材で、木目がこうでなければダメだ。節がこんな具合にあるものもダメ」と、熱弁は尽きなかった。

実は、後から知ったことなのだが、コックさんとの出会いは母の看護をして下さっているYさんの娘、吉川麻里子さんの計らいだった。
麻里子さんは、普段からコックさんとの付き合いを大切にしている。風車小屋の入り口の壁に、風車群の維持管理に役立てようと寄付金箱が取り付けてある。
それは麻里子さんが手作りしたものだそうだ。
土手の上を自転車に乗って偶然のようにコックさんは現れた。近づいてくる自転車に向かって麻里子さんが駆け寄る。
「コックさん、来てくれてありがとう!」
彼女は、小躍りして喜ぶ。その姿を見ていると、親元を離れて7年間、異国でひたむきに仕事に取り組んできた様子がよくわかる。
観光案内のサービスの一つと言ってしまえばそれまでのことだが、お客様になんとしても喜んでもらおう、満足してもらおうとする心意気に胸打たれる思いがした。
オランダ視察旅行は、私の意向を汲んで吉川麻里子さんがすべて組んでくれた。
住宅視察旅行としては、実に内容が豊富で、毎日がエキサイティングであり、かって体験したことがない最高レベルのものになっている。
明日は、午前中にアーメルスフォールトの「ソーラーパワーの家」を見学し、午後からユトレヒト大学の建物を視察する予定だ。
カテゴリー: 投稿者 :松井









