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2007年10月31日(水)

ニチアスの耐火性能偽装

内部告発が続いている。
これからさらに拍車が掛かりそうだ。
建材メーカーのニチアスが、耐火性能を偽った製品を販売していたことが明らかになった。
隠蔽を指示したのは社長であるという。
川島社長は言っている。
「実際に家に住んでいる人への配慮が足らなかった。顧客第一主義をはき違えてしまった」と。
そんなことを言う人は、人格欠陥人間、悪党に等しい。
建材メーカーには、直接お客様と接しないだけに、住む人の幸せを願わず、自分の都合、利益ばかりを追い求める連中が相当いる。
カネカの建材事業部長であるK氏もその一人だ。私とはクレゾール事件をきっかけとして冷戦状態となった。なぜそうなったのか?
住む人の幸せを願おうとしない高砂建設のK会長に肩入れし、ソーラーサーキットのブランドを損なうことをし続けているからだ。
類は類を呼ぶ。
業務提携をする「すてきナイスグループ」の社長が、同類でないことを切に願って止まない。

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2007年10月30日(火)

お客様の励まし

T邸の引渡しが終わった。
Tさんは最初スウェーデンハウスへ行った。概算予算を聞いて尻込みしたという。次いで三井ホームを訪ねた。見た目を重要視していた夫妻にとって、三井ホームの提案はデザインが素敵で魅力的だった。
心中ではほとんど三井ホームと契約しようと決めていたときに、久保田紀子さんの〔さらに「いい家」を求めて〕に出会う。体感ハウスを訪れ、勉強会に参加した。そこではじめて「住み心地」の大切さに気づかされたという。しかし、見た目も大切だ。実際にマツミで造った家を見せてもらうことにした。
久保田さんが案内したのは、Iさんの家。5年前に、久保田さんの自宅を訪ね、住み心地を確認した人だ。
7月の蒸し暑い日に、Iさん夫妻は素足でいたという。
「冬も素足ですよ」と笑いながら。
お医者さんなので、健康に役立つ暮らし方についての説明が実に説得力があった。久保田さんは、ただひたすら聞き役だったそうだ。

Tさんのお嬢さんは、たいへんインテリアセンスに優れていた。夫妻もそうだったが、三人は見栄えということにも大いにこだわった。キッチンセットまわりの家具はすべてオーダーした。ドアノブをはじめあらゆる箇所に、とことん思い入れを込めたので、それらがすべて物語りになっている。
Tさんは言われた。
「設計の川上さんも、監督の加藤さんもさぞかし大変だったと思います。しかし、苦労していただいた分が勉強になり、この家を担当したことで一段と成長してくれたらうれしいです」と。
ご夫妻の目が潤んでいた。
 
その夜、体感ハウスのリクライニングチェアーに座って、
You raise me upを聴いた。
 
落ち込んで、心が、すっかり元気を失っているとき
トラブルに見舞われて、重荷を感じているとき
ここで動かずに、黙って待っているんだ
君が来て、僕の隣でしばらく座ってくれるまで
 
君に励まされれば、僕は山々の上に立つことができる
君に励まされれば、嵐の海を歩くことだってできる
君に支えられているとき、僕は強くなれる
君に励まされれば、僕は自分を越えることができる
(訳:小林誠一)
 
私は、お客様と感動を共にできた夜は、よくこの歌を聴く。
「君」を「お客様」に置き換えて。
社員に励ましを与えてくださるお客様ほどありがたいものはない。
しかし、社員がすっかりしょげ返っているときもある。
そんなとき、「いつかは、家が、お客様の心を温めるだろう」と心の中で慰める。
我々は、精一杯正直に尽くしたのだから。

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2007年10月28日(日)

最初の契約

DSCF3440.jpg
S様から、新事務所での最初の契約をいただいた。
天気は台風一過の快晴。
「いい家」を、しっかり造ると心で誓いつつ、契約書に判を押した。
 
今日の勉強会は、参加者15名。
皆さんが席について対面する瞬間は、何回やっていても緊張する。
いいご縁が結ばれますようにと願いつつ最初の一声を発するのだが、
その後はお客様の反応次第で内容はかなり違ったものになる場合がある。

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2007年10月27日(土)

三度の「不安」

今日は偶然にも「不安」という言葉を三度聞いた。
はじめは、久保田さんからの電話だった。
  
今日横浜体感ハウスへお見えになられたお客様がこんなことを言われました。。
「冬になると、娘たちが我が家に帰るのは寒いので嫌になるというのです。確かに寒いということは人の気持ちを不安にさせます。この体感ハウスのように暖かい家ですと心が休まるでしょうね」と。
 
二回目は、国立市に住むAさんからの電話だった。
Aさんは芸術家だけに感性の相性をとても大切にされていた。
「めったにないことなのですが、松井さんとは相性がぴったりします」と言われ、デザインから仕様、設備、内装などすべてを一任された。
多忙な方なので、打ち合わせはたまにしかできない。担当の設計士が私の考えや意見、選択を説明する。Aさんは、「こんな風にしてもらえるといいのだが」という程度の願いを言う。
外観については、控え目だけれども見るたびに愛着がわくようなデザインを望まれた。私が決めさせていただいた屋根の色、外壁の色、それらは新事務所と同じコーディネートである。
Aさんとはほとんど直接打ち合わせをすることなく工事は進められていった。
そして引き渡した後も、一度もお会いできないでいたのだが、久しぶりに聞くAさんの声は弾んでいた。
「今日で、引渡しを受けてからちょうど1年が経ちました。
1年間住んでみて、本当にいい家だと思っています。私は、よく家を留守にします。しばらくぶりに帰ると、いつもこの家は、私を気持ちよく迎えてくれるのです。以前の家は、何か不安を感じさせられました。梅雨時はかび臭かったり、夏は蒸し暑く、冬は寒々として。
でもこの家は、まったくそんなことを感じさせません。家に帰るたびに元気が湧くのです」
そして「役員改選と新事務所移転のお知らせ」の中に書いたサミエル・ウルマンの「青春」の詩を、Aさんも大変好きであると言われた。
「この家は、ウルマンの詩のように私に元気を与えてくれるようです」
私はその言葉に感動を覚えた。
 
三度目は、久しぶりに夕食を共にした長男からだった。
彼は、今年の初めにマンションを購入し一人暮らしをしている。
「マンションは寒い。夏は暑い。寒いところに帰ると何か不安な気持ちになるんだなー」
 
確かにそうなのかもしれない。
気分感情障害(うつ病)や不眠を訴える人、すぐ切れやすい人、慢性疲労、自律神経失調症などに悩む人の増加は、寒い家、寒い部屋と関連性があるのではなかろうか。暖房しても、風呂に入っても、体の芯が温まらない家に住むと、疲れが取れないし、体調が改善されない。
寒い家、寒い部屋は、夏は暑くてたまらない。冷房すると、今度は体の芯が冷えてしまう。体の芯が冷えると、これまた上記のような症状に悩まされることになる。
それは構造と断熱の方法が間違っているからだ。
  
「不安」という言葉は、母親の心に響いたようだ。
「マンションを人に貸して、家に戻ってきたら?」と言う。
温かな家に住む母親は、子供をぬるま湯につけようとする。
私は、父親として少なからず不安を感じた。

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2007年10月26日(金)

熱湯経営

IMG_4959.jpg

新事務所を土足にするか、スリッパにするか、ずいぶんと迷った。
一軒家なのだからスリッパにしようと決定したのだが、この二日間を見る限りでは問題なさそうだ。
 
朝のミーティングで話した。
 
大和ハウス工業の会長である樋口武男さんが言っている。
「社員みんなを幸せにするためには熱湯の中で泳ぐのも辞さず。経営者にはそのくらいの覚悟が問われるのです」と。
この快適な仕事環境をぬるま湯と勘違いしては困る。ぬるま湯につかっていたのでは、お互いに損してしまう。私も樋口さんと同様に熱湯経営をしていく。
 
セブンイレブンの鈴木会長は言っている。
「社員に妥協するのは簡単だか、妥協したときすべては終わる。部下がいかに自己正当化しようと、追い詰めて今の方法では駄目だと気づかせ、殻を破らせるのが上司の役目だ」と。
お互いが幸せになるために、ぬるま湯や妥協を徹底的に排除する覚悟だ。
それが嫌だというなら、この事務所から出て行ってもらいたい。
 
早速一人出て行くことになった。
実は、引っ越す直前にも出て行った者がいた。
タバコを止められないために。

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2007年10月25日(木)

新事務所オープン

新事務所がオープンした。
「やはり木造は違うなー。玄関を入ってきた感じがビルとはまるで違う」
そんな感想を漏らす社員が目立つ。
引越しの疲れはあるが、みんなの表情は明るい。
三層になっているので、私にとっては動く距離が三倍以上になり運動不足の解消にもってこいだ。
地下は工事部。そこが一番の人気。およそ地下室というイメージがない。ドライエリアから燦々と光が入り、風の入り具合も申し分ない。
設計部は、一階と二階に別れている。社員同士の打ち合わせ、ミーティングを行えるテーブルが6箇所にある。テーブルのデザインと面材の種類が違うだけではなく、椅子のデザインも違う。だから、それぞれの場所によって雰囲気が変わる。いつでも好きな場所で図面や資料を広げて話し合える。
気分転換になるし、発想が豊かになるだろう。
社員のデスクはすべて木製で、オークビレッジhttp://oakv.co.jp/index.htmlに依頼した手作りの一品ものである。金物はまったく使われていない無垢の木組みのデスク。
図面ケースも特注の木製。オークビレッジの作品は、吟味された材料を、磨き上げた腕で加工し、こだわり抜いて仕上げを施す。100年使っても飽きられず、愛着は深まるばかりであるという。
お客様の打ち合わせテーブルと椅子はカンディハウス。http://www.condehouse.co.jp/index.php椅子のデザインがユニークで座り心地がいい。
整理整頓ができて、落ちつくまでには1週間はかかりそうだ。
お客様方には、11月16日から25日までの間、お披露目をする予定である。
その間は、相川伸一郎画伯http://www.h3.dion.ne.jp/~aikawa/の作品を展示する。

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2007年10月22日(月)

7回目の引越し

http://matsumi.com/blog/archives/2007/07/post_415.html
7月19日に紹介した「一生の記念となるように」の史花さんの家、その上棟が無事終わった。
いつもはしないことなのだが、監督たちにしっかりとサポートさせてご一家にはしごを上ってもらい二階へ案内させた。
「うわーっ、ここが私の部屋になるのね!」
史花さんの感激した声が聞こえてきた。
自分の部屋が持てる、うれしいだろうな。
一日も早く引っ越せるようにしてあげよう!
 
いよいよ明日は会社の引越し。
事務所の移転は7回目となる。
35年前に6帖+4.5帖の貸家からスタートして、自前の事務所にようやっとたどり着いた。
二階のバルコニーに出ると、小金井カントリークラブの芝生を撫でてきた風に包まれる。目の前に、「若葉住宅」が見えるのだが、その一角にある貸家のそのまた一角で2番目の事務所を構えた。
だから近所の方が「里帰りですね」と笑っている。
当時からこの建物があるところは駐車場だった。
3〜6番目の事務所へ通勤する往復で、いつも念じていたことは、「いつか土地を手に入れて事務所を建てよう」ということだった。その夢が叶った。
 
史花さん一家が次回打ち合わせをするのは、新事務所である。

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2007年10月21日(日)

勉強会の後で

IMG_4891.jpg
勉強会が終わって一人きりになると、ここに座ってしばしの間体感ハウスの雰囲気にひたる。
今日も皆さんが実に熱心に話しを聞いてくださった。
私は、構造・断熱の方法・依頼先の選択がいかに大事なのかを語る。その前に久保田紀子さんがソフトな雰囲気で「いい家物語」を語るのだが、これが好評だ。私の後に、社長が「マツミの家造り」について理論的、実証的に歯切れ良く話す。
三人が、それぞれの立場で語る約2時間半には、こぼれんばかりに中身がつまっている。
それだけの内容の勉強会は、おそらく他にないであろう。
 
この椅子に座ると、4枚の絵を眺めることができる。左手前の絵は坂口紀良、右側はツー・リー・リーの作品。安らぎは、気に入った絵と、音楽と、雰囲気によってもたらされる。一人ひとり、お客様の顔を思い浮かべ、いい縁が結ばれますようにと祈りつつ、バング・アンド・オルフセンから流れる音楽にひたる。

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2007年10月20日(土)

家づくりの目的

K邸の上棟が無事終わった。
Kさんは、こんな挨拶をされた。
「私は家を建てるにあたり三つのことを考えました。
一つは、住み心地の良い家であること。
二つは、地震に強い家であること。
三つは、省エネで維持費が安上がりになること。
そのような家は大手ハウスメーカーでは造れない、こだわりの強い工務店ならできるはずだ、と思って探しているときに[「いい家」が欲しい。]に出会いました。
家族で勉強会に参加し、じっくりと体感しつつ、外断熱のマツミの家が希望を叶えてくれると納得しました。基礎工事からつぶさに見ていましたが、職人さんたちは実にマナーも素晴らしく、丁寧にしっかりした仕事をしてくれていました。
これからが楽しみです。どうぞよろしくお願いします」

家造りの目的のトップに、明確に、住み心地を掲げる人は少ないものだ。
目的さえ定まれば、体感による選別の大切さに気が付く。そして、家族の感性を信頼することで「いい家」への道はより近く、確かなものとなる。

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2007年10月19日(金)

上棟中止

かなりの量の雨が降るという想定で、上棟は中止となった。
午前10時からの地鎮祭は、薄日が差す穏やかな天候の下で行われた。
神主さんによる祝詞奏上の最中にも、上棟を延期したことが良かったのか否か、そっと空を見上げてしまった。
今日のように、夕方になっても雨が降ってこないと気がもめて落ちつかない。
施主さんご一家は、今頃さぞかし延期した判断を訝しがっていることだろうと察するからだ。
「やればできたのではないか?」
ご家族の会話が聞こえてくるような気がしてならない。
午後8時ごろになって待望の(?)雨が降り出した。それも予報どおりにかなり激しく。車のフロントガラスを叩く雨脚を見て、ようやく気分が落ち着いた。
もし、上棟していたら、雨音を聞く施主さんご一家の心中が思いやられて眠れなくなるだろう。
「よーし、明日は立派に棟上げするぞ!」
担当の設計士と現場監督に気合のメールを送った。

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2007年10月17日(水)

200年住宅

EPSON032.jpg
 
政府は、建て替えずに何世代にもわたって住み続けることが可能な「200年住宅(超長期住宅)」の普及に取り組む方針を決めた、と今日の読売夕刊がトップで伝えている。
福田首相はこの構想について、自民党の住宅土地調査会の会長だった今年5月に提言をまとめ、先の所信表明演説でも構想実現への意欲を強調したほどに肝いりだそうだ。
構造的には、耐震性を高めるために柱や梁を従来のものよりも太くし、耐久性向上のため、基礎部分を地面から高くし、風通しを良くすることだとある。
 
200年住宅のイメージ図が掲載されているのだが、それは読売新聞のスタッフが適当に書いたものだろう。もしも国土交通省が作成したものだとすると、担当の役人たちは福田首相の政治的なアドバルーンに苦笑しながら付き合っているとしか思えない。真剣さ、慎重さ、意気込みがまるで見えない。
 
そもそも洋の東西を問わず、最初から200年も持つ住宅を企画した国があるのだろうか?
地震がない、ハリケーンに襲われない、シロアリがいない、梅雨や高温多湿がない、そして、何百年経っても壊したくないような美しい家並みだから、結果的に、「超長期住宅」になっているのだと私は思う。
だからといって、そこに住んでいる人たちが必ずしも満足しているとは限らない。私がヨーロッパの国々を旅して知ったことは、古い住宅を大切にする気持ちと、新しい住宅に住みたいという願いでは、後者が年々強まっているということだ。それは家の性能、すなわち住み心地と省エネ度が違いすぎるからだ。
 
イメージ図を見てみよう。
気になるのは、大き目の床下換気口がガバガバとあいていることだ。となると、この家の断熱の方法は床下断熱である。つまり内断熱(充填断熱)だ。
「基礎部分を地面から高くし、風通しを良くする」このような家は、外断熱の家と比べたら住み心地の点で比較にならないほど劣るものだ。
また、基礎コンクリートを200年持たせるには、外断熱にすることは建築物理の常識である。断熱の方法は、木造、鉄骨造、コンクリート造を問わず外断熱が基本であり、内断熱は外断熱をした建物の断熱性能を高めるためにのみ用いるべきものだ。
言い換えるなら、外断熱をしない建物に内断熱を用いるのは間違っている。断熱の方法に間違いがある建物は、温度差で結露を生じやすく、カビ・ダニ、腐朽菌、シロアリの被害に遭いやすい。住む人と家そのもの健康も害され、寿命を縮めかねない。また、熱橋となる部位が多く、省エネという点からもマイナスだ。
そんな家が200年も持ったら国家的に大損失となる。「200年住宅」を本気で実現する気があるのなら、外断熱を条件付けることが絶対に必要だ。
 
この構想に住宅メーカーからなる「住宅生産団体連合会」の和田勇会長(積水ハウス社長)は「非常に共鳴できる」と賛同しているそうだが、これまた本気だろうか?
鉄骨系プレハブ住宅は、ダイワハウスのように外断熱にして構造体の熱伝導の弱点を解消できない限り、直ちに生産を中止すべきものだ。住む人の健康と、省エネという点から住宅には適していないからだ。

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2007年10月16日(火)

相川伸一郎の世界−2

EPSON031.jpg
ヨイショのばあちゃんの畑に コスモスが咲きました。
小川の水をくむのに いつも「ヨイショ」
畑にまく時も「ヨイショ」
 
僕らがつかんだ魚をのぞくのにも
ほらまた「ヨイショ」
(手のひらの詩・心の絵本(探求社)より)
  
4月11日に相川さんの絵との出会いを書いた。
http://matsumi.com/blog/archives/2007/04/post_351.html
 
〔相川さんは、自分が子どもの頃に遊んだ山や川を題材にして「私たちのこころのふるさと等こころの理想郷」を描いていらっしゃるナイーブアートと呼ばれる素朴画のアーティストです。
 相川さんは、「我意我楽我為」(がいがらがい)という言葉を使われますが、それは、自分の意志で、自分が楽しむ事、それが自分の為だという意味だそうで、絵を描く姿勢として以前から掲げられているものです。しかし、この言葉に至るまでは、肉体的、精神的にどん底だったそうです。生活の安定のために時代に流されるままにイラスト等を描いている自分が嫌になり、一時期、絵を辞めたときに生まれた言葉らしく、その響きには重みがあるように感じられます。(左京ボイスより抜粋)〕
 
相川さんの「手のひらの詩・心の絵本(探求社)」は、このような書き出しである。「鳥たちが自由に飛べる山がある。魚たちが我物顔で泳げる川がある。そんなのどかな風景、夢のふる里。野では花が咲き、木立では童たちが妖精のように唄っている。昔どこかで見た風景の中へ、いつしか引き込まれそうな不思議な世界。」
 
11月後半に、新事務所で相川先生の絵を展示させていただくことになった。
個展と言ったのでは、場所柄から先生に失礼となってしまうが、東京で先生の絵を直接見られる機会はこれまでになかった。
デパートなどから開催の申し入れがあっても、滋賀県彦根市に生まれ、京都に在住する先生は、東京人には自分の絵は好んでもらえないと決めて断ってこられたそうだ。
東京人にはふるさとがない。うさぎ追いしかの山、小鮒つりしかの川が見当たらないからであろうか。
京都の一乗寺にある先生のアトリエを訪ねて、新事務所のオープン記念にご協力をお願いしたところ、快くお引き受けくださった。
ちなみに、「いい家」をつくる会の2008年度のカレンダーは先生の作品である。

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2007年10月15日(月)

ダイワハウスの外断熱

「ダイワハウス中四国」からの招きで、久保田紀子さんと共に講演に行って来た。
私は本の中で、親会社が生産販売している鉄骨系プレハブを厳しく批判している。「ダイワハウス中四国」という会社は、木造外断熱による家造りをしている。いずれにしても、ダイワハウスと言えばライバルであることは間違いない。
そこに講演に行くとはいったいどういうことなのか?
社員も訝しがった。おそらく「いい家」をつくる会のメンバーが知ったら唖然とするかもしれない。
最初、取締役の堂本さんが依頼に来られた。続いて、社長の夏目 剛さんが来られた。数年前から、[「いい家」が欲しい。]を何度も熟読され、これからの家造りは外断熱をスタンダードにすべきだと確信されたという。
そして自社の家造りをさらに改善し、住み心地においてマツミの家に追い付き、追い越そうと決意されたそうだ。
私は、ご両人のお人柄に惹かれ、お互いに良きライバルになれればという思いでお引き受けすることにした。
岡山のホテルの会議場には、営業マンをはじめ社員が150人ほど集められていた。
全員が、一言も聞き漏らすまいと迫力ある姿勢で話を聞いていた。
いい家を造ろうとする者同士が、信念とパワーを交流し合った100分間は、あっという間に終わった。

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2007年10月14日(日)

いつかはマツミの家に

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横浜体感ハウスでの勉強会は、今日も満席だった。
本の読者との出会いは、楽しみであるが緊張する。
「勉強会に参加して、本当によかった」と言ってくださるお客様が多い。
我々三人は、それぞれの立場で誠心誠意を尽くして「いい家」について語っている。終わると、一時は口をきくのがつらく感じるほどだ。
時たまそうなるのだが、今日は、久保田紀子さんと松井祐三の話が終わると一斉に拍手が起こった。
あるお客様が話してくれた。
「暑い盛りの日に工事中の現場を見せてもらったのですが、大工さんがこの家は仕事をしている者にも気持ちがいいと言ってましたよ。確かに、現場が涼しいのに驚きました。大工さんたちもいつかはマツミの家に住みたいと願っているそうです」と。

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2007年10月13日(土)

ドイツの省エネ住宅視察

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8月にドイツのデュッセルドルフを訪れ、最先端省エネ住宅を視察した。
そのとき、地元のラジオ局と新聞の取材を受けた。これは地元紙に載った写真と記事だそうだ。
 
「こんな天気はお好きですか?」
1日中雨だったこの日にそんな質問を投げかけてみた。
松井修三さんからすると、日本人はなかなかユーモアのある民族らしい。
日本の首都、東京に所在するマツミハウジングの社長である松井修三さんは、今年の夏ずっと続いているこの天気につき、一般のドイツ人と変わらない意見を持っているようだ。つまり、最悪だと。
松井修三さんは昨日、久保田紀子さんと共にLeverkusenのSchlebuschを訪れ、Bayer社の姉妹会社である[住まいと建物マネージメント/Gewoge]を建築主とする、省エネルギー面でより能率性があり、尚かつモダンな造りの省エネ住宅街[Leimbacher Berg]の外観と機能がどのようなものであるかを視察した。
 
「日本から松井さんが来るという話はNRW州のエネルギー局からまわってきた」とGewoge社のBurghard Petzelは述べる。[「いい家」が欲しい。]の著者である松井修三さんは、最新の省エネルギー法がドイツでどの様に取入れられ、家作りに反映されているかを調査するために来たと言う。
この省エネ住宅街建築のプロジェクトは、2002年に全国で行われたコンテストにより生み出され、以来Leimbacher Bergには26軒の住居が建てられ、現在は6軒が建築中である。
いずれここには合計46軒の住居が建つ予定だ。
「この家の特徴は、従来の暖房設備を使用しなくてもよいように造られていることです」と、建築家のLars Roessing(写真の手前の人、真ん中は通訳の根岸舞子さん)は、遠い日本からはるばるこの地を訪れた訪問客を建築中の住居内に案内しながら説明した。
太陽熱の集熱、地中熱の利用、緑化された屋根、特殊な断熱施行などのコンセプトから、各住居の年間の暖房費はたったのEuro 220.00だとPetzelは述べる。
 
しかし、最大のハイライトは、巧みに開発された換気システムだと言えるだろう。これは、熱交換器内で排気と給気が混ぜ合わされ、温度が交換されることによって90%の熱を再利用できるというものだ。
また、夏には暖かい外気が地中で冷却され、室内に送り込まれるようになっている。このような機能により、省エネハウスでの必要暖房熱量は、従来の家に比べて4分の一になる。
 
松井修三さんは、これらの説明に注意深く、また興味津々に耳を傾けていた。
彼の頭の中では、より優れた省エネ住宅を建築するプランが練られているようだ。

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2007年10月10日(水)

一丁上がりの家造り

DSCF3338.jpg

事務所を出て駅に向かう。西武新宿線に乗り高田馬場で山手線に乗り換える。西日暮里で千代田線に乗り換えて一つ目の駅が「町屋」である。
そこから都電に乗って二つ目の駅を降りて歩くこと5分でO邸に着く。合計の所要時間が約1時間。
車だと2時間は掛かる。
「もし、マツミさんで引き受けてもらえないのでしたら私たちは家の建替えを諦めるつもりです」
奥さんがご家族を代表してそう言われたとき、私の心には熱いものがこみ上げてきた。O邸の敷地に足を踏み入れるとき、いつもその言葉が思い浮かぶ。
 
現場では、大津棟梁が近くのアパートに泊まりこんで腕を振るっている。
「仕事は段取り次第」といわれるが、訪ねるたびに段取りの良さを実感させられる。
「今日も電車ですか?」と大津さん。
「ああそうだよ。チンチン電車(都電)に乗るのが楽しみでね」
「電車のほうが気が楽でいいでしょう?」
「確かだね。ところでアパート暮らしは慣れた?」
「ええ・・・」
大津さんはちょっと気になる笑いをもらした。
「奥さんや子供たちと離れて、寂しいんだろうね」と冷やかしてみた。
「向こうは喜んでいるんじゃないですか」
大津さんの奥さんは大のテニス好き。娘さんは大学のテニス部で大活躍をしている。
「そう言いたくなるようでは、寂しいということだね」
弟子の阿部さんと宇都さんが笑いながら大きくうなづいた。
  
町屋から池袋に出て、埼京線に乗り換え板橋へ。
駅から歩いて5分で三階建てのS邸に着いた。1ヶ月間ほど工事が中断していたのだが、ようやく計画変更の許可が下り工事が再開したばかりである。
いま大問題になっている建築確認申請の大混乱の影響だ。
真柄棟梁は言う。
「姉歯のような悪から家の安全性を守るために法律を厳しくする、それはいいことだと思いますがね、この程度の変更で1ヶ月も工事をストップしなければならないのはおかしいですよ」
「いや、1ヶ月などはいいほうで、2ヶ月以上中断させられているところもあるようです」と弟子の阿部さんが口を挟んだ。
真柄さんは、とつとつと話す。
「知り合いの大工たちは、仕事が急減していると嘆いています。タマホームのような安売り業者が盛んに声を掛けてきているようですよ。手間代をますます下げられても数でまかなえれば何とかなると引き受けるようですが、良心的な人は大工を止めたいと言ってます」
 
国土交通省の考えは、あたかも木造軸組みによる注文住宅を規制したいかのようだ。鉄骨系プレハブの受注が伸び悩み一部のメーカーは赤字に転落している。それを救済するには、工務店のシェアーを分け与えるのが一番簡単だ。
それは法律と制度をちょっといじれば可能になる。
今回の法律改正で一番問題になっているのは、いったん出した建築確認申請の内容を工事途中で変更することは、たとえお客様の利益になるものであっても認めないとするところにある。それでは、プレハブが一番だと国が認めるに等しいではないか。
設計図を時間をかけて完璧に作ったとしても、実際に作っていく過程でもっと良いことに気がつくことはあるものだ。そこが手造りの良さであり、変更に臨機応変に対応できるのが工務店の能力であるが、それはイコール大工の能力なのだ。増改築が大工の能力なくしては不可能なことからもよくわかるであろう。だから工務店は大工を育て、生活を保障し大切にして、大工と一心同体の関係にある。
今回の法改正は、造る側の都合を優先する規格・画一型のハウスメーカーや、安売りビルダーたちを応援するために行われたのに等しい。
気づいてもらいたい。
積水ハウスや旭へーベルは大工を必要としないということに。組み立て、貼り付け、据え置いて、一丁上がりの家造りだ。だから、変更はなく、規制や基準や制度によくなじむ。言い方を換えれば、役所の指導が楽で済む。責任負担が少なくて済むのだ。
家の安全を確保するという大義が、大工の手による家造りの否定につながりつつある現状を知らなければならない。
私には、大工不要の家造り、それが国民の幸せになるとは思えない。
しかし、積水ハウス、旭へーベルなどのプレハブメーカーは、この非常事態の最中に、わが世の春の到来を喜んでいるようである。

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2007年10月09日(火)

新事務所のデザイン−3

外断熱工事が終わり、窓が取り付いてまもなく大工さんからこんな話を聞かされた。
通りがかった人がこの家はおかしいと言うのです。そのわけは、二階の南面に窓が1ヶ所しかない。北側にはたくさんついているから南北を取り違えているのではないのかと。

確かにそう思う人がいても不思議はない。
なぜそのようにしたのか?
事務所は、生活の場よりもはるかに大量の熱を発生する。
30台以上のパソコン、サーバー、コピー機、照明、そして人体からも熱が発生する。
そこに窓からの太陽熱が加わると、冷房を強めに使わざるを得なくなる。強めの冷房の中で仕事をするのは健康に良くない。社員にもマツミの家の魅力である涼房の快適さの中で仕事をして欲しいのだ。
また、太陽の光は仕事にとってはまぶし過ぎるので、遮る工夫が必要になる。
設計の仕事には、太陽光よりも人工灯が適している。街道は車の往来が多く音がうるさい。
それらの条件を検討してみると、南に面する二階の窓は極力少なくしたほうが合理的だ。二階は設計部が使用するので、勾配天井にして必要なときだけ天窓から光を採り入れるようにすると気分が落ち着くし、想像力を発揮しやすい。
風が気持ちよいときには、地下室の窓と天窓を開ければ、事務所内にこもった熱や湿気や臭いは、風と共に抜き去ることができる。
新事務所で一番魅力のあるのは地下室だ。予想以上に光と風が入る。冬は温かく、夏は二階よりも5度ぐらい温度が低い。二階の北側に設けた内倒し窓と地下室の窓の相互作用で、街道の音や埃に悩まされることなく二階でも省エネで涼しさを得ることが可能になるだろう。
南北を取り違えたようなデザインには、それなりの意味があるのである。
 
いろいろデザインについて書いたが、はたして社員たちは満足してくれるだろうか?
新事務所のデザインは物足りないものかもしれないが、いずれ「なんとなくいいなー」とみんなが思うようになってくれたらうれしいのだ。
「なんとなくいい」、それが私の家造りの哲学だから。

みんなで力を合わせ、これまで以上にいい仕事をしようではないか!
お客様に心から納得し、喜んでいただける仕事を。
私は新事務所をお客様から授かったものと思っている。
お客様の幸せを心から願うための場として。

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2007年10月08日(月)

新事務所のデザイン−2

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リブチンスキーは「建築の見方」白揚社で、ヘンリー・ウォットン卿が1642年に発表した論文を取り上げている。ウォットン卿は、「建築における目的とは良い建物を建てることであり、良い建物には三つの条件がある、それらは有用さ、堅固さ、悦びである」と定義した。それをリブチンスキーはこのように言い換えている。
「そもそも建築には、ただ一つだけではなく、三つのはっきりとした目的があるのだ。それらは人間の活動を収容すること(有用さ)、重力と風雨に永続的に抗うこと(堅固さ)、美しくあること(悦び)である。建築とは、つねにこれら三つの統合体である」と。
いずれにしても、その主張は私の考えと一致している。
 
事務所として有用であることは当然の目的なのだが、私は社員たちが「いい家」造りに能力を存分に発揮できる環境を提供したいと願い続けていた。社員たちが日々の体感によって住み心地に対する感受性を豊かにできるならば、「いい家」造りの質が向上するし、アフターメンテが的確にできるようになるものだ。そのためには、「マツミの家」を事務所にすることが一番だ。
堅固であることは、大地震や自然災害時に、事務所については何も心配することなく、お客様の家々への対処に全力を注ぐことができる体制をつくり上げるための絶対条件である。そのためにも「マツミの家」であるべきだ。
 
私は土地を購入したときから、二つの願望を実現するチャンスを得たと思ったのだが、世間体を気にして体感ハウスを建てるとアナウンスしていた。
駅前の店。それは商売をするものにとって夢なのだから、そこに見切りをつけるには大いにためらいがあった。マツミの将来にとってプラスなのかマイナスなのか、迷いに迷った。そして移転を決意した後でも、私を全面的に信頼し駅前進出を叶えてくれたオーナーから残留を説得されると心が揺らいだものだ。
しかし、基本的な願望は日に日に確信となり、やがて私の心の中から世間体を気にするというような不純な動機は消え去った。それと共に、霧が晴れるようにして建物のデザインが鮮明に浮かび上がってきた。
 
私は思うのだが、建築のよくある失敗例は、「美しくあること(悦び)」が他の二つの目的から突出していたり、なおざりにされるためにバランスを欠くことでもたらされる、と。
デザインを動機付けるものは、差別化や自己顕示の欲求にあるのだが、それらが強くなり過ぎると目立ちすぎて独りよがりなものになりがちだ。動機が不純で、歪んだ美意識や虚栄という下心によるデザインは、見る人に不安や不快を与えもする。かといって、美しさに無頓着なデザインは環境にとって迷惑となる。
そのような考えで、予定した建物を再検討してみると居丈高であり、目立ちすぎていて環境とのバランスも欠いていた。
新しいデザインは、作図をする設計士が驚くほどシンプルなものであった。かといって、いま流行のシンプル・モダンといわれる箱型スタイルではない。
正面から眺めると建物の両翼は平屋に見える。どう見ても住宅にしか見えない。
小ぢんまりとして、控えめで、どこか物足りない感じがする。
出来上がった模型を眺める社員たちは、「何でこんなにシンプルにしたのだろうか?」という疑問の表情をあらわにするものが多かった。中には、「これがマツミスタイルかと、お客様が減ってしまうのでは」と心配する者もいた。
しかし、私は言い切った。
「何よりも大切にしたいことは、地元の人たちに好感を持ってもらえるということだ。このデザインは、年間50棟以上は建てないと決めているマツミの身の丈に合っていて、街道の風景とも調和していると確信する」と。
 
かくして着工のゴーサインを出したのだが、建築確認は計画変更ではダメで一から出し直しとなった。

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2007年10月07日(日)

新事務所のデザインについて

女房とそんな会話をしてから、私は書斎のデスクに座った。
そして壁に貼ってある新事務所の模型を写した写真を眺めた。
「どうしてあのようなデザインにしたのですか?」
これまでのところ誰からもそうした質問を受けていないが、近々誰かが質問してくることは間違いない。
いや、すでに世間では質問が交わされているのかもしれない。
 
イギリスの詩人であり外交官でもあったヘンリー・ウォットン卿は、「建築においては、目的が作品行為を支配しなければならない」という。
その考えからすれば、事務所という目的に適ったデザインの建物を造るべきだった。三階建てが建てられる場所なのだから、鉄骨造かコンクリート造で容積率を最大に活用した建物を。社員も大工も職人も、私がそうするとばかり思い込んでいた。私がそのようにすると公言していたからだ。
短期間で3階建てのプランが確定し、建築確認をとった。
しかし、何事にも決断の早い私が、工事の着工にゴーサインを出すのをためらった。基礎屋は段取りが狂い、工事部は大工のローテーションを急遽組み直す羽目になった。
なぜ、ためらったのか?
それは、動機に納得しきれないものを感じるようになったからだ。正直に言うなら、私の胸中には、世間体を気にするものがうごめいていた。「駅前から撤退したとは思われたくない。そのためには立派に見える建物を造らなくてはならない」という思いである。
私は、その邪念を意識しながら工事に着手することが嫌になった。そこでいったんすべてを白紙にすることにした。邪念を振り払い、どのような建物がマツミの事務所としてふさわしいのかを一から考え直すことにした。

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2007年10月06日(土)

世間の見方

工事が追い込み段階に入っている新事務所の前に立っていると、ちょくちょく顔見知りの人に話しかけられる。
「もう間もなく完成ですね。いつからお住まいになるのですか?」
年配の女性は、私の自宅だと決め込んでいた。
昨日は看板の取り付けに立ち会っていたのだが、年配の男性は看板を見ながら大声で言った。
「立派なご自宅ですなー」と。
「いや、事務所なのですよ」
「ああ、事務所を兼ねられるのですね」
「いや、事務所だけです」
「ええっ、これが事務所なのですか?
どう見ても、住まいに見えるんですがね」
またある初老の女性に聞かれた。
「駅前の一等地から、なんでこちらに引っ越してくるのですか?」と。
近くに住むその人からすると、駅前は一等地であり、このあたりは三流に思えるようだ。
それぞれの人の話を聞いていると、世間の見方を教えられているような気がした。
そこで家に帰って女房に聞いてみた。
「私も通るたびに普通の家に思えるわ。どう見ても事務所には見えないですよ。たしかに、世間様からすれば、駅前から撤退したとしか思えないでしょうね」
彼女は、涼しい顔をして世間様の代表であるかのように答えた。

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2007年10月04日(木)

200年住宅に思う

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たくさんのファサード(建物の正面)を見たが、この建物には驚かされた。
というのは、道路面の外壁が崩れ落ちないように木材で固定しているからだ。
日本人には考えられないやり方だ。
そうまでしても壊さない理由は何なのだろう?
ここでは法律や協定を持ち出したくない。
ご先祖様に対する尊敬と感謝を答えとしたい。
アムステルダムの土地は、もともとあったものではない、すべて干拓して創られたものなのだ。建物は何十本かの杭を打ち込み、景観に思いを致しつつ建てられたものが多い。一棟一棟に、熱く、楽しく、切ない物語りが染み込んでいるのだろう。
保存し、維持管理するために要する費用は不足であっても、物語を大切にし、誇りとする市民の意志に感動させられる。
道路を隔てた建物同士を、ワイヤーでつないで倒壊を防いだりもしている。
それがまた観光客にとってはたまらない魅力と映る。
最近、わが国では200年住宅というアドバルーンが揚がった。景観に対する企画すらなしに物語性の乏しい家造りをしたところで、100年後に愛着や誇りを持って住み続けようとする住人がどれほどいるというのだろうか?

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2007年10月03日(水)

アムステルダムの風景

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建物の多くは、運河沿いに建てられている。
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間口が狭く、肩を寄せ合うようにして建てられているのは税負担を軽くするため。建築主たちは、破風(建物の帽子の部分)のデザインを競い合ったというだけに興味は尽きない。
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17世紀に建てられた建物のほとんどは、多少傾いたり、歪んだり、写真の建物のように曲がったりしている。
アムステルダムは海面下の街であり、埋立地だからやむを得ないことだそうだ。地盤を補強しながら、建物の存続に努めているという。建て替えるという考えはないようだ。
下の写真で、前のめりの建物が見える。実際に見ると感慨深い風景だ。
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チューリップの球根を売る店。
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遊覧船に乗って、運河から眺める街の風景も楽しくすばらしい。
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2007年10月01日(月)

滑稽なビル

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このビルは、アムステルダム駅前にある。
地震国から来た旅人にとっては、ショッキングなデザインだ。
見る角度によっては、いま正にひび割れて崩れ落ちるように思える。
駅のホームに上がって連結した電車の間から見たのだが、電車が動き出すとやはり倒壊するように思えた。
「奇をてらう」は、過ぎると滑稽に見える。
その典型がロッテルダムにあるキューブ・ハウスだ。
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ドイツのデュッセルドルフでは、「醜」としか思えないビル群を見た。
1853年に「醜の美学」鈴木芳子訳・未知社を書いたカール・ローゼンクランツ(ドイツの哲学者)が見たとしたら、たぶん同じ感想をもらしたのではなかろうか。
ローゼンクランツは、「美」の対極に「滑稽」を置き、「醜」をその中間に位置づけた。「形の定まらないもの」、「不正確」、「歪曲・ゆがみ」は、往々にして醜く見えるものだ。
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