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2008年10月16日(木)

久保田紀子「悪者の家」パート2

我が家がテレビドラマで使われるのは、嬉しい反面、気が重かった。
撮影で家の表と玄関内を使い、俳優さんの控え室と着替えに室内を貸していただけないか、とのことだったからだ。
となると、真っ先に思ったことは片付けをして掃除をしなくてはならないということだった。庭の植木も伸び放題なので、植木屋さんも手配しなければならない。あれもこれもと考えてしまい気持ちが急いた。
電話で植木屋さんと打ち合わせを終えると、息子がこんなことを言った。
「それって、いいのかな?今の手入れをしていない状態を監督さんはいいと思ったんじゃないの?一応確認してからにしたら」
なるほど、さもありなんと思ったが、そのままにした。
しかし、剪定作業中に担当者が偶然にもやって来て、庭を眺め回した後でいかにも「まずいなー」という表情をした。そして、門から玄関までの植木はこのままにしてくださいとのことだった。私は、いつものほほんとしているように見えるが、わが息子の気づく力に驚かされた。
  
家の中は、3日程掛けて片付けた。
仕切りドアのない家の中は、一段とすっきりし、広々とし気持ちが良くなった。
撮影初日、私はだいぶ緊張しながらスタッフや俳優さんを待っていた。
まず最初に、大道具や小道具のスタッフの方々が入ってきて、室内に傷などが付かないように養生し、テーブルなどが実に手際よくセットされる。そこに衣装やメイク担当の人たちがやって来て準備に入る。
大道具さんは、リビングと玄関の中間に壁を立ち上げ書画をセットした。照明係はライトを当てる位置を確認している。
外を見ると、道路には車が数台駐車しており、他のスタッフも大勢いた。駐車場のゲートが上がり、ジャガーがバックで庭に入ってきた。ワックスがよく効いて車体が輝いている。
それらの人たちに向かって、眼光の鋭い老齢の人がいろいろと指示を出していた。よく見ると、その人が監督さんだった。下見にきて挨拶されたときは、柔和で腰の低い方だったが、まるで別人のような威厳を放っていた。
先日、頂いた名刺には山本邦彦とあった。サスペンスドラマや新必殺仕事人などの監督もされているという。
今回撮影されるドラマは、テレビ朝日の2時間もので、「弁護士・森江春策の事件 裁判員法廷」だそうだ。
私はじゃまにならないようダイニングで待機することにした。そこに、このドラマのメインキャストである中村梅雀さんが入ってこられた。
「おはようございます!おじゃまいたします」
テレビで聞き覚えのある声だった。
我が家に、芸能人がやってきた瞬間である。
私の瞳は3倍ぐらいに見開かれたに違いない。最高の笑顔でお迎えした。続いて角替和枝さんが入ってきて、「よろしくお願いします」と頭を下げられた。
ああ、彼女の独特の声を生で聞いた。私は、すっかり興奮してしまった。そして自分に問うていた。
「あなたは、なぜこうも芸能人を見ただけで興奮してしまうのか」と。

カテゴリー: 投稿者 :松井


 
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