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海外視察旅行記
世界に誇れる、
住み心地いちばんの家を目指して

2016年7月
ドイツドイツ編

ドイツ
「パッシブハウス」を訪ねて

ドイツ 
パッシブハウスは快適か?

最近のドイツの家づくりを見たくなって、明日から22日までの予定で出かけることになった。

いざというときには、スーツケースを持って階段を上り下りできるように身軽であるべきだと説く人がいて、そのとおりだと思い、中身を軽くするか、筋力を鍛えるか、その両方を達成するか、迷う日々が続いていた。

だが、10日間の夏の旅にもかかわらず、中身は満杯になり、筋力は期待に応えてくれない。

二階からおろすのに一苦労したスーツケースは、業者に軽々と持ち上げられ、今日のうちに成田空港へ運ばれていった。


老後を支えてくれる一番確かなものとしての家づくりを心掛けるべきだ。

75歳を過ぎると、急速に筋力は衰える。それを防ぐには、リズミカルに家の中を動き回ることだ。家中が快適であるなら、動くことが喜びとなる。


と、勉強会でいつも力説している。半年前にその話を聞いて感動し、条件が整ったので建築を依頼したいとのお話をいただいた。

昨日は地鎮祭、今日はご契約。

ありがたい話の連続に感謝しつつ、明日の今頃はコブレンツのホテル。

モノトーンな佇まい

モノトーンな佇まい 1

フロイデンブルグの木組みの家。

今回の旅の動機は、この景色に惹かれたことにもある。小高い丘の上に座って、1時間ほど眺めていた。高齢化の波にいつまで耐えていられるものなのか、物理的寿命は維持できるとしても、住人の寿命は先が見えている。

旅人を感動させる静謐な美が、一日も長くありますように祈った。

初日に、この景色に見とれた目には、翌日から見た家々はあまりにも味気ないものだった。

モノトーンな佇まい 2

(虫に食われた柱を修繕する住人)

パッシブハウス

パッシブハウス 1
パッシブハウス 2
パッシブハウス 3

フランクフルトの中心街から、車で30分ほど走ったところで「パッシブハウス」と認定された建物だけが建てられている住宅街を視察した。

年に3日ほどしかないという35度近い暑さは、夜来の雨で和らいだが、午後には日差しがあり、27度・湿度75%の気候だった。

戸建て・2戸長屋から4階建てまでの街区は、どこもシンプルな外観の箱型ばかりで、外壁のアクセントに用いられた色彩のセンスの乏しさが気になった。

どれも一様な外観に変化を付けるには、外装材の選択しかないと言わんばかりのデザインは、すぐに見飽きてしまう。

屋根が見える住宅も建てられていたが、日本の建売住宅の方がずっとおしゃれなものが多い。


ほとんどの住宅の窓が、内倒しで開けられていた。エアコンを使わないので、暑さをしのぐには窓を開けるしかないのだろう。


「パッシブハウス」とは、ダルムシュタットにあるパッシブハウス研究所(PHI)が求める省エネルギー基準を満たしていると同所が認定した建物で、わが国ではこの住宅こそが理想だと主張する建築家や工務店主もいる。

人の発熱量だけで暖かく感じることができるほどの断熱性能に優れているというのだから、皮膚感覚が鋭敏な人や、暑さに弱い人はつらく感じる時期があると思うのだが、住人に言わせると、そんな時期は年に1週間あるかないかなので気にならないという。


家は、その土地、その家族に合うように造られるべきものなのだから、ドイツではそれでいいのだと思った。しかし、「涼温な家」が最高の住み心地を発揮する地域では過剰性能であり、「過ぎたるは及ばざるごとし」を痛感することになると断言できる。

住む人の感受性を二の次にして、省エネ性能や建築物理を最優先する家づくりを私は理想とはしたくない。