91歳で建て替える
東京都三鷹市のHさんからご契約をいただいた。
Hさんは91歳になられる。一緒に来られた娘さんご夫妻が、契約に至るいきさつを話してくださった。
「父が、いま住んでいる家の隣地が売りに出されたのを知って買い取って建て替えたいと言い出したのです。それなら、私たちが住み心地に大変満足しているマツミの家がいいのではと薦めました。
最近、『涼温換気』といって換気の方法が進化して、さらに住み心地が良くなったようだと話すと、父は呼吸器系の医師ですからすぐに理解し、賛同してくれました。新築された家には、妹と姪が一緒に住む予定です。
父の願いは、家族が代々にわたって楽しく健康に暮らせる家を建てることです。父は今日の契約をすごく楽しみにしていました」。
私は、お客様に向かって空気の大切さを語り始めてから、娘さんご夫妻も医師であることを思い出し、これは釈迦に説法だと気付いて話を止めた。
契約書にサインをされるHさんの色艶の良い横顔を見ながら、ウルマンの詩を思い浮かべていた。
「青春とは、人生のある期間をいうのではなく、人生の有り様をいうのである」、「年を重ねただけでは人は老いない。理想を失うときに初めて老いがくる」。
91歳になって家を建て替えることは、いくら経済にゆとりがあろうとも、情熱と勇気、そして理想なくしてはとてもできることではない。お父上のお考えをサポートし、プランニングから契約まで尽力されてこられた娘さん夫婦のご期待にも精一杯お応えしたいと思った。
コラム
- 一条工務店との違い
- 健康長寿の時代の家づくり
- 「エコハウスという魔法」
- 「エコハウス」って?
- 新しい家のカタチ
- 「丁寧な仕事に敬意を払う文化」を破壊する人たち
- 純米酒と父と母
- 心の涙で泣く人間
- からだで感じ、からだで考えるならば
- 先輩の言葉
- 魔法の手
- 妻が喜ぶ家を
- 自足できる家
- ロボットが造る家
- 工務店にしか造れない家
- 91歳で建て替える
- ある精神科医の話
- 住み心地は百薬の長
- 色のある屋根
- 松井 修三 プロフィール
- 1939年神奈川県厚木市に生まれる。
- 1961年中央大学法律学科卒。
- 1972年マツミハウジング株式会社創業。
- 「住いとは幸せの器である。住む人の幸せを心から願える者でなければ住い造りに携わってはならない」という信条のもとに、木造軸組による注文住宅造りに専念。
- 2000年1月28日、朝日新聞「天声人語」に外断熱しかやらない工務店主として取り上げられた。
- 現在マツミハウジング(株)相談役
- 著書新「いい家」が欲しい。(創英社/三省堂書店)「涼温な家」(創英社/三省堂書店)「家に何を求めるのか」(創英社/三省堂書店)