ロボットが造る家
組立工は増えているが、大工が減る一方だという嘆きがあちこちで聞かれる。基礎・屋根・板金といった技術と経験が絶対に必要な職種においては特に熟練工不足が目立つ。
大手ハウスメーカーの中には、それらのすべてを組み立て方式にするところが増えてきた。中には、屋根までも工場生産してクレーンで吊り上げるメーカーもある。
「工場でロボットが造るのですから、1ミリの狂いもなく、雨漏りの心配はまったくありません。工期は短縮できますし、いいこと尽くしです」と、営業マンは言うそうだ。
現場でこの話が話題になった。
「3年もすると、鉄骨系プレハブはもとより、木造であっても量産住宅の主役はロボットになっているかもしれない」。
私がそう話すと、平成生まれの大工見習の3人は、自分たちの将来が想像できないようで、戸惑った表情になった。
「となれば、あなた方のように、家を造れる大工の値打ちがぐんと増すことになるということだよ。世の中には、ロボットが造る家には住みたくない、大工さんの手、職人さんの手によって造られる家に住みたいと願うお客様が必ずいるからね。
ロボット生産に適する家は量産され、手づくりの家と言うのは、その土地、その家族に最適なように造られる。だから住み心地がいい。いつの時代になっても、『いい家が欲しい』と願う人は絶えないものなのだ」。
傍らで聞いていた親方が、「私もそう思います」と力強く相槌を打つと、平成トリオの表情がパッと明るくなった。
コラム
- 一条工務店との違い
- 健康長寿の時代の家づくり
- 「エコハウスという魔法」
- 「エコハウス」って?
- 新しい家のカタチ
- 「丁寧な仕事に敬意を払う文化」を破壊する人たち
- 純米酒と父と母
- 心の涙で泣く人間
- からだで感じ、からだで考えるならば
- 先輩の言葉
- 魔法の手
- 妻が喜ぶ家を
- 自足できる家
- ロボットが造る家
- 工務店にしか造れない家
- 91歳で建て替える
- ある精神科医の話
- 住み心地は百薬の長
- 色のある屋根
- 松井 修三 プロフィール
- 1939年神奈川県厚木市に生まれる。
- 1961年中央大学法律学科卒。
- 1972年マツミハウジング株式会社創業。
- 「住いとは幸せの器である。住む人の幸せを心から願える者でなければ住い造りに携わってはならない」という信条のもとに、木造軸組による注文住宅造りに専念。
- 2000年1月28日、朝日新聞「天声人語」に外断熱しかやらない工務店主として取り上げられた。
- 現在マツミハウジング(株)相談役
- 著書新「いい家」が欲しい。(創英社/三省堂書店)「涼温な家」(創英社/三省堂書店)「家に何を求めるのか」(創英社/三省堂書店)