健康長寿の時代の家づくり
「100年時代の人生戦略」という副題がつけられた「LIFE SHIFT(ライフシフト)」(リンダ・グラットン/アンドリュー・スコット著/東洋経済)を読んで、これからの家づくりの方向性を確信した。
それは、100歳までは健康で長生きできるという前提で、家づくりに取り組むべきだということである。健康長寿の恩恵に最大限浴するにはどうしたらよいか。正しい選択ができれば計り知れない恩恵を、老後に得ることができる。
しかし、悪い選択や、判断を間違えるとどうなるだろうか?
17世紀の思想家トマス・ホッブズは「人生は、不快で、残酷で、短い」と嘆いたそうだが、これからの時代に、家づくりの選択を間違えると「人生は、不快で、残酷で、長い」と嘆くことになりかねない。
子育てが終わり、定年が過ぎると第二の人生が始まる。人生総仕上げのステージの幕が開くのだ。
第二の人生の舞台は、冒険家や特殊な才能と体力に恵まれた人でないかぎりは、わが家である。80歳を過ぎたら、一日のほとんどの時間を過ごすことになる。
そのときになって、本当に建てておいてよかったと思えるのが、上質な住み心地の家である。「まあまあ」ではダメだ。なぜなら、住み心地に対する感受性は成長するものであり、ちょっとした不満がストレスとなるからだ。「健康住宅」と称し、「長期優良住宅」として認定を受けたとしても、「換気」と「冷暖房」の方法で住み心地を悪くしてしまう家づくりは多い。
「涼温な家」に住んで「住む」を楽しむ暮らしをしてみると、80歳を過ぎても感受性と好奇心が旺盛になるのがよく分かる。
四季、家中が快適だから動くことが楽になり、行動の範囲が広くなる。動ける幸せが脳を活性化し、健康長寿に役立つに違いない。
となると、住み心地をいちばんの価値とする「涼温な家」への投資は、健康長寿への投資と言える。安全で、リターンの大きい投資なのだ。
コラム
- 一条工務店との違い
- 健康長寿の時代の家づくり
- 「エコハウスという魔法」
- 「エコハウス」って?
- 新しい家のカタチ
- 「丁寧な仕事に敬意を払う文化」を破壊する人たち
- 純米酒と父と母
- 心の涙で泣く人間
- からだで感じ、からだで考えるならば
- 先輩の言葉
- 魔法の手
- 妻が喜ぶ家を
- 自足できる家
- ロボットが造る家
- 工務店にしか造れない家
- 91歳で建て替える
- ある精神科医の話
- 住み心地は百薬の長
- 色のある屋根
- 松井 修三 プロフィール
- 1939年神奈川県厚木市に生まれる。
- 1961年中央大学法律学科卒。
- 1972年マツミハウジング株式会社創業。
- 「住いとは幸せの器である。住む人の幸せを心から願える者でなければ住い造りに携わってはならない」という信条のもとに、木造軸組による注文住宅造りに専念。
- 2000年1月28日、朝日新聞「天声人語」に外断熱しかやらない工務店主として取り上げられた。
- 現在マツミハウジング(株)相談役
- 著書新「いい家」が欲しい。(創英社/三省堂書店)「涼温な家」(創英社/三省堂書店)「家に何を求めるのか」(創英社/三省堂書店)