「暖房を止め、
風呂を沸かさず銭湯に行く」
2016年11月<読売新聞夕刊で、「広がるウォームシェア節電」を取り上げていた。
解説によると、「ウォームシェア」とは、人が1か所に集まって暖かさをシェア(共有)することで家庭の節電を図る省エネ運動とのこと。
記事の締めくくりの部分を紹介する。
<家庭のCO2排出量の内訳では、暖房は全体の14.6%を占める。冷房の2.6%の約6倍だ。東京理科大の井上隆教授(環境建築工学)らが行った意識調査によると、環境意識の高い人ほど冷房は暖房よりエネルギー消費が多いと思い込んでおり、夏場の節電に力を入れているという。井上教授は、「冷房より暖房を止め、風呂を沸かさず銭湯に行った方が、エネルギー消費は大きく減る」と話している。>
温暖化対策としての効果はさておくとして、「暖房を止め、風呂を沸かさず銭湯に行く」という言葉に、私は新婚時代を思い浮かべた。
当時、アパートには風呂がなく、まさに暖房を止めて銭湯へ通う毎日だった。
女房が前髪に氷柱(つらら)ができたと言うほど寒い日もあった。帰ってくると部屋は冷え切っていて、大急ぎで石油ストーブをつけたものだ。
ここで知っておきたいことは、「家を暖める」と「暖かな家を造る」との違いについてである。
前者は「暖房の問題」であり、後者は「家づくりの方法」である。暖かな家というのは、高断熱・高気密・換気に優れていることが絶対条件で、それらが高度に満たされているなら1台のエアコンで全館暖房が可能になる。
中途半端に造られた家では、人がいる部屋だけを暖めるのに、高性能な家1棟分のエネルギーを消費しかねない。「家を暖める」のは、とても無理だ。
「涼温な家」では、暖房は冷房の1.5から2倍程度のエネルギー消費で済んでしまう。夫婦二人の暮らしであっても、ウォームシェアの必要性がない。1台のエアコンで家中が暖かいので、一部屋でくっついていなくても快適に過ごせるからだ。
「寒い家 夫婦厚着で こころ冷え」にならない家を建てることこそが、温暖化対策に有効だと私は確信している。
景気は、国民の気分の在り方に左右されるところが大であるそうだが、政府が、寒い家での「我慢の節電」を求め、「ウォームシェア」を呼びかけていたのでは先行きが思いやられる。(「涼温な家」より)
コラム
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- 松井 修三 プロフィール
- 1939年神奈川県厚木市に生まれる。
- 1961年中央大学法律学科卒。
- 1972年マツミハウジング株式会社創業。
- 「住いとは幸せの器である。住む人の幸せを心から願える者でなければ住い造りに携わってはならない」という信条のもとに、木造軸組による注文住宅造りに専念。
- 2000年1月28日、朝日新聞「天声人語」に外断熱しかやらない工務店主として取り上げられた。
- 現在マツミハウジング(株)相談役
- 著書新「いい家」が欲しい。(創英社/三省堂書店)「涼温な家」(創英社/三省堂書店)「家に何を求めるのか」(創英社/三省堂書店)